脚本のリライトとは? やり方や意味、リライトするメリット【8つのチェック項目】
この記事は 2023年10月24日 に更新されました。
脚本は一度最後まで書き上げて完成ではありません。むしろそこをスタートラインとしてリライトすることが一般的です。
脚本のリライトはプロでも行う作業ですが、できることなら避けて通りたいと考える人もいるでしょう。
リライトに苦手意識を持つ理由は、やり方が分からなかったり、リライトする意味やメリットを理解していなかったりするからです。
そこで今回は、脚本をリライトするときに役立つ8つのチェック項目を紹介します。このチェックポイントをすべてクリアできれば、あなたの脚本は完成に限りなく近づくはずです。
脚本のリライトとは
脚本のリライトとは、最後まで書き上げた作品を見直し、改善点やつじつまが合わない点を見つけ出して書き直す(リライト)する行為です。
見習い期間中は特に、一度脚本を書き上げたことで満足してしまいがちであるため、リライト作業を行わない方も多く存在します。
しかし、プロの脚本家のほとんどは、リライト作業を行います。それも一度のリライト作業で終わることはまれであり、第二稿、第三稿と稿を重ねていくことが珍しくありません。
プロの中には、リライト作業に半年以上かかった例もあります。
脚本のリライトをする意味とメリット
自作を見直し欠点を探る作業は、苦しい作業に思えるかもしれません。それにもかかわらず脚本のリライトが推奨されるのはなぜでしょうか。
脚本のリライトをする意味は、作品の質を向上させることに他なりません。多くの場合、リライトをすることで脚本は面白くなります。
通常、一度書き上げただけでは、自作を冷静な目で分析することは難しいでしょう。時間をかけて何度も見直すことで、改善ポイントを発見できるようになるのです。その点が、脚本をリライトするメリットだといわれています。
脚本リライトのやり方!チェックするべき8項目
脚本を最後まで書き上げたら、次に紹介する8つの項目をチェックすることをおすすめします。
このチェック項目に沿ってリライトをすることで、「どこをリライトすればいいのかわからない」という悩みが払拭(ふっしょく)されます。
すべての項目をクリアできたとき、あなたの脚本は限りなく完成に近づいているはずです。
《脚本のリライトでチェックするべき8つの項目》
- 主人公にやる気はある?
- 主人公はいろいろな感情を表現している?
- 主人公はラスボスより弱い?
- 主人公は最初と最後で別人みたいに変化した?
- 登場人物のしゃべり方は個性的?
- 登場人物の見た目は個性的?
- 登場人物に単純な動機がある?
- 説明セリフでサボってない?
以下では、8つのチェックポイントを利用した脚本リライトのやり方をひとつずつ解説していきます。
脚本リライトのやり方1
主人公にやる気はある?
脚本の中心である主人公が消極的だったり、悩んでばかりで行動しなかったりする場合、リライトの余地があります。なぜなら、そのような主人公が登場する脚本では、胸がおどる展開にはならないからです。
主人公にはやる気を出してもらいましょう。積極的にストーリー展開に関わり、脚本全体を引っ張るリーダーシップを発揮してもらわなければなりません。
これは、トラブルに巻き込まれるタイプの主人公にも言えることです。例えば、大いなる陰謀に巻き込まれた主人公は、その状況から逃れるために必死に行動するでしょう。そこには確固たる意志が存在します。
そのような意思があなたの主人公にもありますか? 目的や夢、または大きな悩みがありそれを解決したいという強い気持ちがあるか確認しましょう。
さらに、秘めた思いをきちんと表現できているかもリライト対象かどうかを判断するポイントです。セリフで語っているか、行動で示しているか、一度だけでなく何度も表現しているか、確認してください。観客に伝えることが重要です。
脚本リライトのやり方2
主人公はいろいろな感情を表現している?
脚本家は読者や観客の望みをかなえることが仕事です。彼らが何を望んでいるかというと、映画を見ている間だけでもその世界に没頭することです。
登場人物に共感して、泣いて、笑って、ときに痛みを感じて、最後には一つの人生を体験したような満足感に包まれたいと望んでいます。
しかし、観客が感情移入する対象の主人公が、何の感情も表さない人形のような人物だったらどうでしょう。観客は不満爆発で、作品に対して怒りすら感じるかもしれません。
だからこそ、主人公はいろいろな感情を表現するように仕向けます。喜怒哀楽、ありとあらゆる感情を120%体現するのです。感情表現が足りないと感じたら、リライトを検討する必要があります。
例えば、コメディー作品だからといって、最初から最後まで笑っていなければならないことはありません。時には悲しい顔をすることも必要です。反対にシリアスな作品でも笑えるエピソードを挿入したほうがメリハリがでます。
あなたの脚本の主人公は、豊かな感情を表現できるような経験をしているかどうかがポイントです。
脚本リライトのやり方3
主人公はラスボスより弱い?
あなたの脚本の主人公の前に立ちふさがるラスボスは、どんな相手でしょうか。
強大なライバル、モンスター級に突然変異した巨大グモ、街全体を吹き飛ばすような自然災害、結婚に反対する頑固おやじなどなど。
最終関門として立ちふさがるラスボスが、きちんと描かれているかどうかは、脚本リライトの重要なチェックポイントです。
ラスボスは、ちょっとやそっとじゃ倒せないくらい強い存在でなければなりません。具体的には、主人公より強くあるべきです。
もしラスボスが、客観的に見て主人公より弱かったら、リライトが必要でしょう。
主人公を大きく成長させ、魅力的にするには、高くて硬い壁を用意する必要があります。障害をこえることで人間は大きく成長するからです。
だから脚本のラスボスは強くしてください。そして必ず主人公よりほんの少しでも強く見せることが大切です。主人公に対する親心で弱いラスボスを出しても観客は出来レースだと感じて興醒めしてしまいます。
ラスボスのイメージが湧かない人は、主人公とラスボスを表裏一体の存在としてとらえると良いでしょう。両者は似ているけど、正反対でもあります。だからこそ、お互いに反発して対立する関係になるのです。
脚本リライトのやり方4
主人公は最初と最後で別人みたいに変化した?
脚本のリライトをする時、主人公に注目してください。なかでも最初と最後の様子を比較することは見逃せないポイントです。
結論から言えば、最初と最後の主人公は別人と言ってもいいほど、違った印象を持つものでなければなりません。もし、最初と最後で同じような印象を感じてしまったら、リライト対象です。
最初の主人公は、いわゆる使用前の状態です。世の中に不満を持っていて、改善しなければならない点をいくつも抱えています。
その欠点がストーリーを通してさまざまな経験をすることでひとつずつ解消されます。人生を学び、成長するのです。
そして最後には欠けていた部分をすべて補完することができて、主人公なりに満足したところへ着地します。いわゆる使用後の主人公へと変化するのです。
そのため、主人公は最初と最後で、人間的に大きく変化していなければいけません。
あまり変化が見られない場合は、試練が優しすぎたのかもしれません。人間が成長するには厳しい試練が必須です。障害を乗りこえてはじめて大きく飛躍できるのですから、脚本家は心を鬼にして、主人公を精いっぱい痛めつけましょう。
脚本リライトのやり方5
登場人物のしゃべり方は個性的?
脚本の登場人物のセリフは個性的でしょうか。ためしに、人物名を隠してセリフを読み上げてみてください。もし、だれがしゃべっているセリフかわからなくなってしまったらリライトが必要です。
個性的な台詞(せりふ)を書くには、脚本家がその登場人物についてよく理解している必要があります。例えば、あいさつをするだけでも「こんにちは」と丁寧に言うキャラ、「ちわっす」と軽くいうキャラ、そもそもあいさつなんてしないキャラも存在するでしょう。
セリフにキャラ付けをしていく作業は楽しいです。しかしその際は人物像がぶれないように気をつけてください。最初の方では丁寧だった言葉遣いが、後になって乱暴になっては読者が混乱してしまいます。
パソコンで脚本を書いている場合、テキスト検索(Ctrl+F)機能を使うと違和感のあるセリフを見つけやすいです。該当する登場人物の名前+「(かぎかっこ)でページ検索をかけると、その人物のセリフだけをチェックできます。
脚本リライトのやり方6
登場人物の見た目は個性的?
登場人物の台詞(せりふ)に個性が必要ということは伝えましたが、外見にも個性は必要です。あなたの脚本に登場するキャラクターは、どんな服を着てどんな髪形をしているのか説明できますか?もし説明できなかったり、無個性な外見をしていたりしたら、リライト対象です。
脚本に登場する人物が2人なら、読者も混乱しないので外見的な個性は必要ないかもしれません。しかし、3人以上のキャラクターが登場する脚本であれば、それぞれに外見的な特徴があったほうが読者はスムーズに物語へ没頭できます。
脚本に外見的な特徴を書かなくても、演出側でどうにかしてくれると考えているとしたら、それは大きな間違いです。そのような脚本は、そもそも映像化されません。
外見的な特徴は簡単に付け加えられます。例えば、メガネをかけるだけでもいいし、足を骨折していてもいいし、ヒゲをはやしてもいい。とにかく、何かしらの工夫をして、読者に印象付けたほうが良いでしょう。
脚本リライトのやり方7
登場人物に単純な動機がある?
脚本の主人公や敵役、脇役に至るまで、彼らが行動を起こしたりしゃべったりするには、動機が必要です。動機もなくアクションを起こしているとしたら、それは物語に不要なアクションという証拠です。リライト時に削ってしまいましょう。
登場人物の動機は、老若男女、国籍を問わず、人間であればだれでも納得できるシンプルなものでなければなりません。「なんでこの人は今こんなことをしているんだ?」と、読者に疑問を抱かせないよう気をつけてください。
読者は、つじつまが合わない行動には疑問をいだきます。そうならないよう動機は単純にしてください。
殺されそうだから逃げる、おなかが空いたから食べる、好きだから抱きしめるなどなど。
一見して複雑な動機に思えても、突き詰めれば単純な動機に行き着きます。もし単純な動機が見えてこない場合、それは作者のご都合主義によるアクションかもしれません。それもリライト対象です。
脚本リライトのやり方8
説明台詞(せりふ)でサボってない?
古今東西、どの脚本ハウツー本にも紹介されているNG事項に、説明台詞(せりふ)があります。説明台詞(せりふ)とは、キャラクター設定や心情、現在の状況、過去の出来事、人間関係などを台詞(せりふ)だけで説明することです。説明台詞(せりふ)を多用すると観客は退屈に感じてしまいます。
映画は、基本的に映像で見せて伝えるものです。台詞(せりふ)だけで手っ取り早く伝えてしまっては、その醍醐味が削がれてしまいます。また、これこそ脚本家のオリジナリティを披露する腕の見せ所です。
しかし、全てのセリフを削ればいいというわけではありません。無声映画が映画の完成形ではない、ということからもわかるでしょう。名作に良い台詞(せりふ)はつきものです。どうすれば説明的に聞こえなくなるかといえばコツがあります。
そのひとつが、セリフに感情を込めることです。登場人物が怒ったり喜んだりしながら口にするセリフは説明的には聞こえません。
また、本音を語らないテクニックもあります。「嫌い」という台詞(せりふ)をしゃべらせておいて、本心では「好き」ということを表現するのです。これはサブテクストと呼ばれるテクニックです。
さらに状況説明など、どうしてもセリフで説明しなければいけない場合もあるでしょう。そのようなケースでは、魅力的な映像で観客の興味を引き付けつつ、その間に説明を終えてしまう、というちょっと強引なテクニックも存在します。
まとめ
ここまで紹介した脚本リライトのやり方が全てではありません。しかし、そもそもどのように脚本を修正すればいいのか、リライトの基本的なやり方がわからない人にとっては参考となるはずです。
脚本はリライトを重ねるほど輝きを増します。たしかにリライトは根気がいる作業ですが、苦労は必ず報われるのでがんばってください。
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