シナリオの書き方入門:全13ステップと3つの補足情報
この記事は 2023年10月24日 に更新されました。
初めまして、シナリオの執筆に興味をお持ちの皆さんへ。このブログへようこそ!
シナリオ執筆は、創造力を発揮し、ストーリーを形作る魅力的な作業です。ただし、初めて取り組む方は、書き方が分からず戸惑うこともあるでしょう。
どのように物語を構築し、キャラクターを育て、台詞(セリフ)を書くかについての基礎知識やヒント、アイデアを紹介します。また、シナリオを書くためのツールや参考文献なども紹介するので参考としてください。
シナリオ執筆の扉を開け、自分の物語を解決するための第一歩を踏み出してみませんか。シナリオの書き方で悩む方々のお手伝いができれば幸いです。
それでは、シナリオの書き方入門の世界を、一緒に歩いてみましょう!
目次
- 1 シナリオの書き方1_心構え:読者との対話を大切に
- 2 シナリオの書き方2_ログラインを決める
- 3 シナリオの書き方3_タイトルを決める
- 4 シナリオの書き方4_ジャンルを決める
- 5 シナリオの書き方5_テーマを決める
- 6 シナリオの書き方6_キャラクターを作る
- 7 シナリオの書き方7_ストーリーをはっきりさせる
- 8 シナリオの書き方8_プロットを考える
- 9 シナリオの書き方9_構成を組む
- 10 シナリオの書き方10_シーンを立てる
- 11 シナリオの書き方11_ト書きを書く
- 12 シナリオの書き方12_台詞を書く
- 13 シナリオの書き方13_リライト(改稿)する
- 14 シナリオの書き方-補足1_シナリオコンクールへの応募
- 15 シナリオの書き方-補足2_シナリオの執筆ツール
- 16 シナリオの書き方-補足3_シナリオの書き方を学べる書籍
- 17 まとめ
シナリオの書き方1_
心構え:読者との対話を大切に
シナリオライターを目指すなら、いつでも読者を意識しましょう。読者を喜ばせることを考え、常に読者目線で書くことは、基本的な心構えです。読者を無視したシナリオは独りよがりになりがちで、そのような作品は魅力的ではありません。
成功するシナリオライターは、創作の過程で読者と真剣に対話します。読者がどう感じるか、興味を持っているか、驚きはあるか、感情を揺さぶっているか。この対話を大切にすることが、これから学ぶシナリオの書き方の基本です。
シナリオの書き方2_
ログラインを決める
読者と対話する心の準備ができたら、シナリオのログラインを決めます。ログラインとは、作品のアイデアや概要を短くまとめた文章を指します。コンセプトと呼ぶこともあります。
例えば、大ヒットを記録した映画『タイタニック』のログラインは、「豪華客船が沈没する裏側で生まれる切ない恋」です。
黒澤明監督の代表作である映画『七人の侍』のログラインは、「村を山賊から守るために7人の訳あり侍が奮闘する話」です。
ログラインの役割は、シナリオを読む前の人に「ぜひ読みたい!」と思わせることです。
そのためには、普遍的な魅力の中に斬新なアイデアをミックスさせる必要があります。
上記『タイタニック』の例でいえば、「切ない恋」の物語には普遍的な魅力が備わっています。その要素に「豪華客船の沈没」という新たな視点を加えることで、唯一無二のログライン(コンセプト)が出来上がるのです。
シナリオの書き方3_
タイトルを決める
シナリオのタイトルは重要です。タイトルには物語の魅力を引き立てる力があります。
そのため、タイトルは早い段階で決めておいたほうが良いのですが、初心者のシナリオライターは、後回しにしてしまいがちです。
読者の心を引き寄せ、あなた自身の執筆意欲を向上させるためにもシナリオのタイトルは最初に決めてください。
良いタイトルには、シナリオライターの意図が込められているものです。
『ミッション・インポッシブル』や『スター・ウォーズ』は、物語のジャンルやテーマを明確に示しています。観客は、タイトルを見ただけで、シナリオ自体の性格や雰囲気をある程度予測できるので、興味をそそられます。
『フォレスト・ガンプ一期一会』『ロッキー』『アラビアのロレンス』といった主人公の名前を冠するタイトルもよくあります。このタイプのタイトルでは、主人公の存在と物語の結びつきが強調されます。観客は主人公の成長や冒険に興味を示すでしょう。
シナリオの書き方4_
ジャンルを決める
どんな作品にしたいか迷っている状態では良いシナリオはかけません。そのため、執筆前にジャンルを決めることは大切です。
ジャンルが明確であるほど読者や視聴者は期待します。コメディの場合は笑いを期待するし、スリラーなら絶叫シーンがあるだろうと予想するはずです。期待に添えるようなストーリーを目指してください。
ジャンルは混ぜてもOK。例えば『エイリアン』はホラーとSFのミックスです。ホラー✕コメディ、恋愛✕SFなど、オリジナリティあふれるジャンルを発掘しましょう。
ジャンルを決めるときのコツは、自分の好きなジャンルを選ぶこと。流行に乗ろうとしても、筆が乗りません。まずは自分が楽しく書けることが大切です。
一般的なシナリオのジャンルには、アクション、コメディ、人間ドラマ、スリラー(サスペンス)、ホラー、SF、ファンタジー、ラブ・ロマンスなどがあります。
また、一般的なジャンルとは異なり、よりシナリオの本質に迫ったジャンル分けもあります。興味がある方は下記を参照してください。
シナリオの書き方5_
テーマを決める
テーマとは、シナリオライターが、物語を通じて一番に伝えたいことです。テーマがなければシナリオは書き出せません。
しかし、テーマははっきりと書いてはいけません。セリフなどでテーマを伝えようとすると、説教のように感じられてしまうからです。読者や視聴者は説教を嫌います。
テーマは、登場人物の行動や出来事を通して自然に伝えるのがベスト。ストーリーを楽しんでいるうちに、テーマが伝わってくるように工夫してください。
王道のテーマを参考にする
シナリオのテーマには、王道が存在します。王道テーマは人気が高く、観客の心に深く響く要素です。自分の作品のテーマを決める際には、過去の名作を参考とするのも一案です。
- 『ロッキー』:「負け犬が強い意志の力で成功を掴む」
- 『タクシードライバー』:「孤独と疎外感から生まれる狂気」
- 『アパートの鍵貸します』:「愛の獲得」
- 『スター・ウォーズ』:「善と悪の対立」
- 『真夜中のカーボーイ』:「友情」
- 『風と共に去りぬ』:「愛と戦争」
これらは、人間の基本的な感情や欲求と関連します。そのため、年齢や性別、国籍に関係なく、誰もが感動できるのです。
テーマを見つけるコツ
テーマ探しを難しいと感じる人がいるかもしれません。そんなときには気楽に考えましょう。なぜなら、テーマとは自分の心の中にあるものだからです。
ある出来事に遭遇したとき、あなたが思ったこと、考えたことがテーマの原石です。例えば「怒り」の感情に注目します。日々の生活の中で、何に怒りを感じ、不満を抱くかを考えるとテーマが見つかるかもしれません。
シナリオの書き方6_
キャラクターを作る
キャラクターとは、主人公からライバル、ヒロイン、脇役に至るまで、物語に登場する全ての人物たちのことを指します。
独創的なストーリーを思いついたり、精密にプロットを組んだりしても、それだけでは感動は生まれません。それらを体現するキャラクターたちの反応や行動、変化を見て初めて感動は生まれるのです。
まずは主人公から
まず、ストーリーの主人公を決めます。主人公は、シナリオ内において、最も激しく苦難と向き合うキャラクターです。ストーリーが進行するにつれて成長し、最初と最後で大きな変化を遂げます。
パターンに当てはめてイメージを膨らませる
物語の主人公が決まったら、どのパターンに属するかを考えてみましょう。イメージをふくらませる際に役立ちます。
「ヒーロー」タイプの主人公は、自信に満ち、ためらうことなく行動します。観客のあこがれの的であり、勇気や希望を与えるでしょう。
「普通のやつ」タイプの主人公は、視聴者と同レベルのキャラクターです。困難に立ち向かう姿を見せると、観客も強く共感します。
「敗者・落後者」タイプの主人公は、視聴者から見下される立場にあり、同情を誘います。いつでも危なっかしいため読者や視聴者をハラハラ・ドキドキさせるのです。
「アンチヒーロー」タイプの主人公は、道徳的に問題がある行動を取るため、常識を備えた読者や視聴者とは対照的なキャラクターです。しかし彼らが持つ闇の部分が魅力でもあります。
シナリオの書き方7_
ストーリーをはっきりさせる
キャラクターやテーマが決まれば、ストーリーはほぼ出来上がっています。ぼんやりしたイメージをはっきりさせるためにも、以下を意識しましょう。
- スタートからゴールまでの道筋
- キャラクターの感情の変化や成長
どのような出来事がきっかけでキャラクターに変化を起こし、どのような道筋でスタートからゴールまで辿り着くのかを明確にします。
シナリオの書き方8_
プロットを考える
ストーリーが決まれば、それを元にプロットを考えます。プロットとストーリーの違いがわからなくなる人もいるでしょう。両者には明確な違いがあります。
ストーリーは、主人公がたどりたいと望む道筋です。つまり、主人公のたどる道筋をストレートに表現したものです。
しかし、そのままでは読者や視聴者は見ていて面白くありません。山あり谷ありドラマチックな展開を期待しているからです。
そこでシナリオライターは、神様になったつもりで様々な困難をストーリーに組み込みます。どうやって意地悪しよう、痛めつけてやろうと試行錯誤してください。主人公は紆余曲折を繰り返し、苦労の果てにゴールまで辿り着くのです。
キャラクターがもがき苦しむ過程を描くことで、ストーリーに緊張感が生まれます。そして、最終的にどのように解決するかまではっきりさせることが肝心です。
そうして出来上がったロードマップがプロットなのです。
シナリオの書き方9_
構成を組む
プロットができたら次は構成を組みます。構成とは箱書きとも呼ばれる工程であり、次のシナリオ執筆をスムーズにするために作る資料です。
シナリオの構成は基本的に「始まり」から「中間部」を経て「終わり」にいたります。この三つの要素で成り立っているのです。この基本的な骨格は古今東西のどのような物語にも当てはまります。
しかし、土台となる構成が同じでも、その組み方やエピソードの配置が異なれば違う物語になるでしょう。このような工夫をこらすことが構成作業です。
構成を組むときは、観客を飽きさせないよう常に気を使います。「次はどうなるのか」と、シナリオの最初から最後まで期待させ続けることです。
謎が謎を呼ぶ構成
読者や視聴者の興味を引き続ける一つの方法として、謎は効果的です。
例えばミステリー作品では、最初に殺人事件が起こり、その犯人が最後に明かされるまで、大きな謎が興味を引き続けます。
また、その間を取り持つ役割を、小さい謎エピソードが果たしているのです。あの人はなぜあんな発言を? 犯行トリックはどうなっているのか? といった具合に小出しにします。
あれよあれよという間にラストまで惹きつけられればシナリオライターの勝ちです。
シナリオの書き方10_
シーンを立てる
いよいよシナリオ執筆段階に突入します。まずはシーンを立てることを覚えてください。
シーンとは、シナリオの最小単位です。シーンの積み重ねによってストーリーが構築されます。
シーンに必要な要素
シーンを書くには、まず時間、場所、天気などを表します。この指示が柱書き(はしらがき)です。
シーンにキャラクターが登場する際は、最初から存在していたのか、後から入ってきたのか、途中でいなくなったのかなどを指示します。
構成と同様、ひとつひとつのシーンにも始まり、中、終わりが存在すると考えてください。
シーンに込めるべき3つの意味
シーンには「場面の説明」「見せ場」「葛藤な瞬間」のいずれかの意味が含まれなければいけません。意味のないシーンは削除しましょう。
「場面の説明」とは、状況や設定を説明することです。単体では面白みがありませんが、物語を進めるために必要となることがあります。例えばSF設定を説明するために、街でロボットが歩いているシーンなどです。
「見せ場」シーンは、観客の興味を一気に引き付ける狙いがあります。アクション映画のカーチェイスシーンや爆破シーンなど、派手な演出や、あっと驚く意外な展開のことです。
「葛藤の瞬間」は、物語の核心部分である対立を表現するシーンです。このシーンをきっかけに物語が逆方向へ進むなど、大きな転換期を迎えます。ミッドポイントやターニングポイントと呼ばれるシーンが当てはまります。
シナリオの書き方11_
ト書きを書く
シナリオのト書きを書く際に大切なことは、何を書くかではなく、どのように書くかです。
まず、ト書きは読み手にとって分かりやすく、スッキリとした文章にしなければなりません。そのためには、できる限りシンプルな表現を考慮してください。
初心者にありがちなミスとして、書き込みすぎるという点があります。小説であれば問題ないかもしれませんが、シナリオではできる限り簡素に書かなければいけません。
次に、シナリオは映像のための設計図であることを忘れないようにしましょう。読者が映像をイメージしやすいよう、視覚的な描写が重視されます。その前提のもと、感情や雰囲気を伝えるために、緻密な表現や時には大胆な記述も必要です。
最後に、冗長な文章や意味のない表現は避けるべきです。なんとなく書いた文章や雰囲気を伝えるだけの記述は削除します。
シナリオの書き方12_
台詞を書く
初心者はシナリオの台詞を書きすぎる傾向があります。しかし、映画シナリオでは特に、最小限にとどめるべきです。
なぜなら、シナリオは映像化が大前提であるため、視覚的な要素(アクション)を活用して物語を伝えるからです。
映画シナリオの執筆において、重要なのはキャラクターの造形やストーリーの構成です。極端に言えば、台詞は、それらを補完するツールであるとも考えられます。
このようにして選び抜かれたセリフは、最大の効果を発揮するものです。
良いセリフの役割
良い台詞には役割が備わっています。
まず、キャラクターを際立たせる台詞であること。キャラクターの個性や感情を表現し、彼らを魅力的でリアルな存在として描写します。
次に、ストーリーを進める台詞であること。プロットを進展させるために役立ちます。
最後に、状況を説明する台詞であること。映像表現と相まって、状況や背景情報を説明する台詞は良い台詞です。
これらの要素を備えたセリフを書くためには、過去の名作を鑑賞し、優れたシナリオを読み込むことが重要です。学びを積み重ねることで、自分のセンスを磨いてください。
シナリオの書き方13_
リライト(改稿)する
初心者とプロのシナリオライターの大きな違いは、リライトの重要性をどれだけ認識しているか、という点です。シナリオは、読者の心を打たなければ、価値がありません。そして、そのようなシナリオを一度で書き上げることは不可能です。何度も手を加えて完璧さを追求する必要があります。
例えば、射撃では中心に命中させるために、微調整を繰り返します。右に寄り過ぎたら左に、高すぎたら下にするという調整作業が必要です。これこそがリライトです。
プロのシナリオライターは、読者の心(的の中心)に刺さるまで何度もシナリオを磨きます。
どう直すべきか:リライトの手順
シナリオを的確にリライトするには、どの点に注目するべきかわからない人もいるでしょう。何度も読み返すことは必須ですが、その際の着目ポイントを紹介します。
まず、各キャラクターの行動様式や考え方の一貫性を確認します。キャラクターが一貫性を保っていないと、途端にリアリティが失われてしまうからです。
次に、物語の構成が正しい順序で組み立てられているかどうか、プロットに矛盾が生じていないかも確認してください。
また、誤字脱字や書式のミスという初歩的なポイントもチェックしなければなりません。
最後に、台詞を見直します。キャラクターの発言が、そのキャラクターだけの言葉になっているかどうかを確認します。
上記のリライト手順は一つの例です。また、これらの作業を全て書き終えてから行うか、段落ごとにリライトするかも決まりはありません。
大切なことは、自分に合ったスタイルを見つけ、シナリオ執筆時のルーティン化とすることです。
シナリオの書き方-補足1_
シナリオコンクールへの応募
書き上げたシナリオは、シナリオコンクールに応募することをおすすめします。シナリオコンクールに応募することで、自分のレベルを知ることができるからです。
最初から入選を狙う姿勢も頼もしいですが、まずは一次審査突破を目指してみましょう。
シナリオコンクールは定期的に開催されています。映画やテレビドラマなど、公募媒体によって特徴は異なるので、まずは情報収集からはじめてください。
また、シナリオコンクールに応募する際は、脚本の書き方ルールを厳守する必要があります。こちらも公募媒体によって異なるためきちんと確認してください。基本的な脚本の書き方ルールは以下を参考にしていただいても結構です。
シナリオの書き方-補足2_
シナリオの執筆ツール
シナリオは、ペンと紙があれば書けます。しかし実際はパソコンのワープロソフトを利用することがほとんどです。
シナリオの執筆ツールは、何を利用しても問題ありません。Microsoft Wordを使う場合は、テンプレートを用意しているので活用してください。
シナリオの書き方-補足3_
シナリオの書き方を学べる書籍
シナリオの書き方を学べる書籍は星の数ほど存在します。それ故に玉石混交です。迷ってしまったときには、下記の書籍をおすすめします。
- SAVE THE CATの法則 SAVE THE CATの法則
- 映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術
- 「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方
- 映画脚本100のダメ出し ―傑作を生むハリウッド文章術
- いきなりドラマを面白くするシナリオ錬金術
まとめ
シナリオの書き方に決まった順序はありません。しかし初心者の方にとっては、どこから手を付ければ良いかわからないこともあるでしょう。記事で紹介した順序を参考にしていただくと、シナリオの書き方で迷わずに済みます。ぜひ参考としてください。
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