脚本の魅力を120%UPする構成の組み方
この記事は 2023年10月24日 に更新されました。
脚本を書く前には構成を組むことが一般的です。しかし、きちんと役立てている人は少ないかもしれません。もし機能していないと感じるなら、構成について学びなおすことをおすすめします。構成を理解して執筆作業に組み込めば脚本のレベルは飛躍的にアップするからです。記事では構成とはなにか、構成の組み方、構成力を伸ばすための勉強方法についてお伝えします。
目次
脚本構成とは1_
構成を組むメリット
構成は本格的に脚本を書く前に行う作業です。ストーリーの流れを決定したり、脚本家の意図を強調したりするときに役立ちます。
例えば、昔話『桃太郎』で桃太郎一行と鬼が戦うシーン。構成を工夫しなければ戦いを描写するだけです。ところが鬼の支配に苦しむ人々のシーンをカットバックで差し込むとどうなるか。戦闘の背景が明確になり、桃太郎一行の使命感が強調されます。
構成の組み方ひとつで、平凡なシーンが観客の心をつかむ見せ場にブラッシュアップするのです。このメリットを理解せず、構成を作業として組むだけでは時間の無駄と言わざるを得ません。そのためメリットを十分に理解してから構成を組んでください。
- まずは、構成のメリットを理解することから始めよう
脚本構成とは2_
まずは認識をフラットに
構成には誤解されやすい側面があります。間違った認識を持ったままだと上手に構成を組むことはできません。
例えば、ある人は構成を方程式だといいます。決まった場所に決まった出来事を当てはめるだけで、脚本が完成すると言うのです。120枚の映画脚本の場合、最初の20ページが発端部であり、45枚目で大きな見せ場が入る、と信じて疑いません。
このような思い込みを持ったまま構成を組むとどうなるか。その通りにならなかった場合、途方に暮れてしまいます。「見せ場が47枚目になってしまった、どうしよう」と筆が止まるのです。実際、構成は脚本の数だけ存在します。同じストーリーが2つと存在しないのと同じように、構成も千差万別です。
また、構成は全く不要、むしろ邪魔だと考える人もいます。なぜなら脚本は映画芸術の一部であり、前もって構成を組むと創作の可能性を狭めてしまうからだというのです。
しかし、自由気ままにストーリーを書くことで、本当に脚本は完成するのでしょうか。枚数制限がない小説ならつらつらと書いていくうちに骨格が固まるかもしれません。しかし、脚本は規定に従うことが絶対条件です。120枚なら120枚、限られた枚数の中で最高の効果を生むようにエピソードを配置します。脚本冒頭の一行目から最高のパフォーマンスを発揮するためには構成を計算しなければならないはずです。
正しい構成力を身につけるには、まず脚本の構成に対する認識をフラットにしましょう。
- 構成に対する誤解は早めに払拭すべし
脚本構成とは3_
基本的な構成の組み方
脚本の構成を組むときは、できるだけ感情を抑えて機械的に徹するとスムーズにいきます。一例として、エピソードを時系列に並べてから、それぞれ効果的になるように順序を入れ替えたり、過不足分を調整したりする方法があります。この方法だと俯瞰的な視点が手に入るので、論理的に構成を組むことができます。
脚本を執筆するときには、ただでさえストーリーに没頭してしまう人も多いでしょう。その前段階の構成ではできるだけ冷静に全体を見た方が、脚本に奥行きが生まれます。自分がストーリーを並べ替えるだけのロボットになったつもりで構成を組んでください。
- 構成は冷静な思考で組む
ゴールを設定する
脚本の構成を組む前には、ストーリーの全体像を思い浮かべます。誰と誰のどのような話なのか、いわゆるテーマをハッキリ思い描いてから構成を組むのです。エピソードを配置する場所は、物語の目指すべきところによって変わります。
これは子供の積み木遊びと同じです。子どもたちは、積み木でロボットを作ろうか、お城を作ろうか、目指すべき完成図を決めてから作業します。いきあたりばったりで積み上げることもありますが、そのような場合は自分がどうしたいかわからず、カンシャクを起こしてゼロから作り直したり、積み木自体をやめてしまったりするのです。
脚本の構成を組む作業も積み木と同じです。物語のゴールを定めなければ、構成のスタート位置は見つかりません。
- ゴールを見据えないと構成は組めない
引っかかったら立ち止まる
構成を組んでいると、ストーリーの流れに引っかかる場合があります。明らかにミスマッチであるにもかかわらず「このシーンは絶対に入れたい」というこだわりがあると失敗の元です。そのようなこだわりは捨てて柔軟に対処しなければなりません。時には主人公を変えたり、エピソードで起こる結果を真逆にすることもあり得るのです。
再び積み木遊びを引き合いに出すと、無理やり三角形の頂点に何かを乗せようとしても落ちてしまいます。三角形の置き方を変えたり、他の積み木と差し替えたり、柔軟に対処しなければなりません。これは極めて論理的な対処方法です。
脚本を書いていると視野が狭くなりがちで、普通なら気付くことでも見逃してしまいます。だからこそ、構成を組むときには、積み木遊びのように論理的な思考が重要なのです。
- 時には柔軟な思考も大切
映像で語ることを忘れない
構成を組む時には、映像で語ることを忘れてはいけません。なぜなら映像にはたくさんの情報が含まれており、それを忘れて多弁になると、くどい印象を与えてしまうからです。
例えば恋人が破局したことを伝えるには、「笑顔で過ごす男女」「泣き顔の彼女」の映像だけあれば伝わります。どういう気持で別れたのか、どちらから切り出したのかなど、いわゆる映像の行間は観客が読み取ってくれるのです。
これは小説や戯曲にはない映画ならではの特徴だといえます。小説の場合は人物の心情を描写したり、戯曲の場合は状況をセリフで説明したりするでしょう。特に戯曲は視覚によって観客に訴える点が映画と似ていますが、場面転換を頻繁に行えないのでセリフに頼らざるを得ません。
このように映画脚本の構成を組むときには、映像で語ることを念頭に置き、パッパッと切り替えると鮮やかにストーリーが展開するのです。また、初心者はとかく冗長になりやすいもの。「説明が不足しているかな?」と不安になるくらい構成を詰めたほうが、かえってバランスが良くなることがあります。
- 映画脚本の構成は映像で語る
自然な展開を心がける
うまい脚本家ほど構成を上手に隠すので、読者はストーリーに集中できます。逆に構成が複雑なだけの脚本は、思うようにストーリーが伝わりません。この違いは構成の組み方が自然かどうかに関係しています。
森林や花を美しく感じるのは、そこに存在する理由が自然だからです。もし天然樹木の生い茂るジャングルに電柱が立っていたら違和感があるでしょう。脚本も同様で、自然な構成の中に不自然なシーンが入っていると違和感が生まれます。本筋と関係ないエピソードを「盛り上がるから」という理由だけで挿入すると不自然になるのです。
脚本の構成を自然に組むには、関連する出来事だけを厳選してください。つまりテーマに準拠している出来事だけを選り抜くのです。脚本には、物語の最初から最後までを貫いているテーマが存在します。それに即している出来事や登場人物だけにスポットを当てて構成を組むと、たとえ過去、現在、未来が交差するような複雑な構成でも、自然に感じられるはずです。
- 構成はテーマありき
脚本構成とは4_
構成力を伸ばす方法
構成にはいくつかのパターンが存在します。例えば起承転結や序破急などがそうです。しかし、それだけ知っていても実際に構成を組むことはできません。ストーリーやテーマと同様に、構成もオリジナリティあふれる創作物の一部だからです。構成を組むためのスキルやセンスは経験によって培われます。
構成の経験を効率よく積むには、過去の名作映画を分析・研究することがおすすめです。好きな映画からエピソードやシーンを抜き出して、それが三幕構成のどこに配置されているかを考えます。その中で、エピソード同士の相関関係はどうなっているのか、ストーリー全体に大きな影響を与えるエピソードはどれか、と注目すると構成の肝を肌で感じとることができるでしょう。
例えば初めて料理をするとき、レシピを見て塩何グラム、砂糖何グラムとかをきっちり調べて作ります。しかし、やがて慣れてくるとその都度分量を見なくても感覚に従って上手に作れるようになるのと同じです。
ただし、脚本の構成に正解はないので答え合わせはできません。この勉強方法の目的は正しい構成に触れることなので、気軽におこなってください。やればやるほど脚本の構成センスが磨かれるので、ぜひ率先してトライしましょう。
- 模倣が構成力アップの秘訣
まとめ
脚本の構成は必須の作業です。正しく構成を組むことで脚本の魅力を120%アップさせることができます。ただし構成に決まりきったフォーマットはありません。脚本の数だけ構成は存在するのです。そんな構成を上手に組むには経験することが一番の近道。先人の名作を研究して構成を抜き出す作業は、それ自体が有益な経験となり、あなたの構成力に磨きをかけます。
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