面白い脚本を書こうとするとき、多くの人はストーリーを工夫するでしょう。しかし、それだけでは脚本は面白くなりません。脚本を面白くするには、ストーリーとは別に葛藤を描く必要があります。そう、実はストーリーと葛藤は別物なのです。
脚本家としてシナリオを書いていると、ストーリーをいくら練っても読者の反応が薄いと感じることがあります。多くの場合、その原因はストーリーと葛藤を混同していることにあります。この記事では、面白い脚本に欠かせない葛藤とはどのようなものか、そしてストーリー展開を止めることと、脚本全体を貫く大きな葛藤を用意することという、葛藤を脚本に取り入れるための2つのコツについて、具体的な例文を交えながら紹介します。
目次
面白いストーリーなど存在しない

多くの脚本家志望の方は、面白いストーリーを書こうと日々努力をします。しかし、残念ながら、それでは面白い脚本は書けません。なぜなら、面白いストーリーなどというものは、存在しないからです。
例えば、子供との会話を想像してください。子供は自分が遭遇した出来事を伝えようとします。
子供「今日、小学校の国語の授業で本を音読したの」
これを聞いたあなたは「へー」と思うでしょう。大して面白いとは思わないはずです。しかし、次のように続く場合はちょっと違います。
子供「今日、小学校の国語の授業で本を音読したの。とても悲しかった」
あなたは「え、どうして?」と興味を持ちませんか? どうして本を読むことが悲しいのか、と。実は、この付け足した部分には子供の感情、いわゆる葛藤が含まれているのです。だから、聞き手は興味をひかれます。
上記例では前者がストーリーだけを伝えているのに対して、後者はストーリー+葛藤も伝えているのです。
聞き手は、ストーリーだけを聞かされても面白いと感じません。葛藤部分に興味をいだきます。つまり、ストーリーをどれだけ工夫しても、脚本は面白くならないのです。
葛藤とは

脚本における葛藤とは、ある目的に向かう主人公が、なかなか思うようにたどり着けない様子のことです。
例えば、大切な商談に向かう会社員が電車を待っていると遅延が起きる。電車が動くのを待つかタクシーに乗り換えて向かうか迷うとします。その様子が葛藤です。
さらに、会社員がタクシーを探しているとき、なかなか見つけられない、他人に横取りされるなど、目的が達成できずにイライラする様子も葛藤を表しています。
上記例でストーリー部分だけを描くと、会社員はすんなり商談に間に合ってしまいます。そこに葛藤はありません。
障害が立ちはだかることで、主人公が右往左往します。そうして、はじめて葛藤が生じるのです。
葛藤の書き方のコツ

脚本の葛藤には書き方のコツがあります。その中でも重要な2つのコツについて紹介します。
葛藤の書き方のコツ1_
ストーリーを止める
脚本の書き方のコツは、ストーリー展開をいったん止めることです。ストーリーを進めることと葛藤を描くことは、同時に進行できません。
なぜならストーリーが展開している時、主人公は迷わないしストレスを感じないからです。そのため、主人公の思い通り、順調にストーリーが展開すると、葛藤が生まれないのです。
次は、ストーリー展開をストップする例文です。
大切なお客様を迎えるために周到な用意をしていたホテル従業員。やっとの思いで迎える準備を整えたのに、最後の最後で致命的なミスをおかしてこれまでの努力が水の泡。一方、当のお客様はもう入口の前まで来ている。
このようなピンチに「さあどうする」と悪戦苦闘する様子が葛藤です。この時、ストーリー展開は止まるどころか振り出しにまで戻っています。
そのため、葛藤を描くときはストーリーを止める、もしくは後退させなければいけません。
例えば、先のホテル従業員の場面で「もうダメだ、どうしよう」とセリフだけで動揺を説明してしまうのはNG例です。良い例は、手元が震えて鍵を落としてしまう、何度も同じドアを叩いてしまう、深呼吸をしてから無理に笑顔を作るなど、具体的な行動や仕草で葛藤を見せることです。セリフで説明するより、行動の積み重ねの方が読者に葛藤を伝えやすくなります。
葛藤の書き方のコツ2_
大きな葛藤が必要
葛藤は脚本のいたる所に存在します。電車 or タクシー、扉を開ける or 開けずに去る、昼飯をラーメンにする or パスタにする、などなど。
なかでも、脚本の最初から最後まで一貫した葛藤を考えることは大切です。主人公はその目標を達成するために、さまざまな行動を起こします。
ただし、その葛藤が小さくては困ってしまうのです。いわゆる葛藤が弱い状態では、脚本が面白くなりません。そのため、脚本全体を貫く葛藤には、スケールの大きさが求められます。
注意すべきは、主人公にとっての大きな葛藤にしなければならないという点です。例えば、昼飯をラーメンにするかパスタにするかという悩みは、客観的に見れば小さな葛藤かもしれません。
しかし、主人公にとってその葛藤が大きければいいのです。客観的な価値観は、この場合意味がありません。
昼飯を食べることが生きがいで、それによって人生の幸不幸が決定するくらい重大なイベントであれば、脚本のメインテーマにもなります。
葛藤を脚本に取り入れることに関するよくある質問
Q. 葛藤とストーリーの違いは何ですか?
ストーリーは出来事の流れそのものを指し、葛藤は主人公がその出来事に対して感じる迷いや抵抗、もしくは目的達成を妨げる障害との対峙を指します。脚本を面白くするには、出来事の流れだけでなく、主人公がどのように悩み、抗うかを描く必要があります。
Q. 葛藤を強くするにはどうすればいいですか?
主人公にとってその目的がどれほど重要かを描き込むことです。客観的に見れば小さな出来事でも、主人公の人生における意味づけを丁寧に積み重ねることで、葛藤のスケールは大きくなります。
Q. 葛藤が思いつかないときはどうすればいいですか?
まずストーリーの展開をいったん止めて、主人公が「どうする?」と迷う場面を作れないか考えてみましょう。順調に進んでいる場面に、小さな障害や選択を挟むだけでも葛藤は生まれます。
まとめ
脚本を書く時、ストーリー展開だけを考えがちになってしまいます。しかし、それだけでは不十分です。脚本の面白さは、ストーリー以外の部分、登場人物の葛藤にあります。記事の内容を参考にして効果的な葛藤を書いてください。
脚本家として執筆をするときは、ストーリーを書き終えたあとに、必ず葛藤が描けているかを見直す癖をつけています。ストーリー展開を止める場面があるか、そして脚本全体を貫く大きな葛藤が主人公にとって重要なものになっているか。この2点を意識するだけで、脚本の面白さは大きく変わります。今回紹介したコツを参考に、ぜひあなたの脚本に効果的な葛藤を取り入れてみてください。
脚本の書き方をさらに学べる本
葛藤の描き方をさらに深く学びたい方には、以下の書籍もおすすめです。


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