どんでん返しの作り方をパターン解説!映画の実例から学ぶ
この記事は 2023年10月24日 に更新されました。
どんでん返しが用意された映画は人気です。一方、複雑な伏線を張り巡らせたり、熟練の構成テクニックが必要ではないのかと尻込みする人もいます。
しかしどんでん返しは、意外と手軽に導入できる技法です。特に新人は、自作を目立たせるためのアクセントとして導入することをおすすめします。
記事では、どんでん返しとは何かという疑問に答えつつ、基本的な作り方を解説します。また、映画の実例を元に、どんでん返しをパターン別にカテゴライズして紹介します。
目次
どんでん返しとは
どんでん返しは、 クルッとひっくり返って表裏が入れ替わる忍者屋敷のからくり扉が由来です。また、歌舞伎の強盗返(ごうとうがえし)のように、一瞬で場面転換する技術を指して言うこともあります。
転じて、物語が一瞬で逆転するストーリーテリングの技法をどんでん返しと呼ぶようになりました。
一般的に、どんでん返しが用いられるのは物語の終盤です。それまで物語を通して積み上げてきた状況や設定といった、常識を大きく覆すどんでん返しは、観客を大いに驚かせます。
どんでん返しの作り方
どんでん返しの作り方は、それほど難しくありません。最終的に露見する真実を、ひた隠しにしてストーリーを展開すれば、どんでん返しは出来上がります。ポイントは、読者や観客に「なにか隠しているのでは?」と感づかせないことです。
また、秘密を暴露するタイミングにも気を払います。積み重ねたエピソードが多いほどショックが大きくなることから、どんでん返しはラスト付近に仕掛けるのが一般的です。
真相を長々と説明するのも避けましょう。ツルハシの一振りでダムが決壊するかのごとく、一気に逆転させてください。一言のセリフやワンアクションで、すべてを逆転させることが、どんでん返しの作り方のコツです。
どんでん返しのパターン例
どんでん返しでは、種々様々な要素が逆転します。逆転する要素やその手法をカテゴライズすることで、限られたパターンに分類できるはずです。実例を元に紹介するので、脚本執筆の参考としてください。
以下で紹介する作品紹介はネタバレを含みます。ご注意ください。
どんでん返しのパターン例1
作品テーマが逆転する
テーマとは、作品を通して伝えたいことです。脚本家が最も重視する部分だといえるでしょう。どんでん返しをもちいることで、それまで伝えようとしていたテーマが一瞬で様変わりします。
『マッチスティック・メン』
映画『マッチスティック・メン』
主人公である詐欺師の元に、生き別れの娘だと名乗る少女が現れます。戸惑う詐欺師ですが、少女と過ごすうちに父性を開花させ、やがて裏稼業から引退して真人間になろうと決意するのです。
ところが、主人公は最後の大仕事でヘマを犯してしまいます。結果、娘に危害が及ばないよう、これまで溜め込んだ金の在り処を口にするのです。
ここでどんでん返しが発動します。
実は、生き別れの娘というのは真っ赤な嘘でした。さらに、劇中で主人公が関わった登場人物のほとんどが、裏で手を結んだ詐欺師たちだったのです。
つまり、みんなで主人公を騙そうと画策しており、娘を名乗った少女もその一味でした。主人公が溜め込んだ大金が目的です。大金を盗られ、娘も存在しないと知った主人公は絶望の底へ叩き落とされます。
本作のテーマは「生き別れの親子が絆を取り戻せるか」だと思わせておきながら、実は本当の親子ではなかったというどんでん返しです。
暴露の直前まで親子の絆が育まれる様子を丁寧に描いているのがこのどんでん返しを成功させたポイントです。
『鑑定士と顔のない依頼人』
映画『鑑定士と顔のない依頼人』
主人公の年老いた鑑定士は、若い娘に人生で初めて恋をします。物語終盤まで「老いらくの恋の行方」に気を取られていた視聴者も多いでしょう。しかし本作でも、作品テーマを根底から覆すどんでん返しが用意されています。
実は主人公が恋をした娘は泥棒だったのです。主人公に恋愛指南をするプレイボーイや、主人公の仕事仲間たちと手を組んで、彼が生涯をかけて収集した美術品を盗みました。
主人公は、美術品と愛を失い抜け殻のようになってしまいます。
本作のどんでん返しは、周囲のすべての人間が嘘をついている点と、愛情で主人公をひきつけている点で、上記で紹介した『マッチスティック・メン』と似ています。しかし、結末部分が天国と地獄ほど落差があるので見比べてみることをおすすめします。
どんでん返しのパターン例2
主人公の設定が逆転する
主人公は、読者や観客が最も感情移入する存在です。そのため、主人公の設定にどんでん返しが起こると、大きな衝撃を与えられます。
『シックス・センス』
映画『シックス・センス』
本作のどんでん返しは、公開当時、とても話題になりました。映画のラストで「本作のラストは他の人には言わないでください」という旨のメッセージが表示されたほどです。
肝心のどんでん返しは、主人公の小児精神科医が既に死んでいたというものです。つまり、映画全編に登場していた主人公は幽霊だったのです。その事実が映画のラストで明らかにされました。
「主人公が死人であるはずはない」という観客の固定観念を逆手に取った、斬新で秀逸などんでん返しです。
『アヒルと鴨のコインロッカー』
映画『アヒルと鴨のコインロッカー』
本作のどんでん返しは、日本人だと思っていた主人公が、実はブータン人だったというものです。荒唐無稽な仕掛けのように思えますが、キャスティングと俳優の演技で表現しています。
この映画は伊坂幸太郎による小説が原作です。作家の特徴である張り巡らされた伏線は、ストーリーの随所に散見しています。これら伏線が、大胆などんでん返しの裏付けになっているのです。
小説『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂 幸太郎 (著)
どんでん返しのパターン例3
夢や幻で逆転する
夢や幻を利用してどんでん返しを仕組む手法は、伝統的なテクニックです。ただし、上手に利用しないと観客を落胆させてしまうので気をつけてください。一方、工夫次第では斬新な仕掛けにもなりうるでしょう。
『ファイト・クラブ』
映画『ファイト・クラブ』
本作は、主人公が2人いるように見せかけておいて、一方は幻だったというどんでん返しで有名になりました。つまり、主人公が作り出した幻覚が、もうひとりの主人公として映画に出ていたのです。
また、劇中に登場する人物たちには、そもそも幻の主人公が見えていません。このどんでん返しは、観客を騙すために用意されたトリックです。
幻覚や妄想は、夢オチと似た部分があります。いわゆる「何でもあり」の状態になるので観客の興味を失わせてしまいがちです。
しかし、本作は気弱な青年の精神的な成長というドラマ部分をしっかり描きました。その成長過程を視覚的に表現するために、幻が存在していたという構図であるため違和感なく受け入れられたのです。
どんでん返しは、あくまでも観客をアッと言わせるためのテクニックに過ぎません。本質はドラマ部分にあることを理解して、必然性を持ってどんでん返しを利用する必要があります。
どんでん返しのパターン例4
構成が逆転する
細かな嘘(伏線)の積み重ねが一気に効果を発揮すると効果的です。緻密に計算したどんでん返しは、視聴者に感動を与えます。
『ユージュアル・サスペクツ』
映画『ユージュアル・サスペクツ』
本作は、一人の犯罪者が狂言回しとなり、警察の取り調べに自白する形でストーリーが進みます。大きな犯罪の裏に見え隠れする悪魔のような男、カイザーソゼ。その恐ろしさだけが浮き彫りとなり、実体は明らかになりません。
物語ラスト、違和感を覚えた刑事が、狂言回しの自白の中から伏線を回収して、スピーディにカイザーソゼの正体へたどり着きます。パズルが組み上がった時の満足感にも似た爽快感を得られるはずです。
カイザー・ソゼの正体は、狂言回しのことだったのです。最初から映画に登場しておきながら、観客に感づかせない脚本の完成度は飛び抜けています。
『ユージュアル・サスペクツ』は、アカデミー脚本賞を受賞するほどの評価を得た映画です。どんでん返しの代表格のような作品なので、興味がある方は構成を徹底的に分解して勉強してください。
まとめ
どんでん返しとは、それまで映画内で積み上げてきたある種の常識を180度逆転させて、観客を驚かし満足させる手法です。どんでん返しの作り方はそれほど難しくなく、徹底して隠し、最後に一気に暴露します。原理はシンプルですがバリエーションは種々様々なので、実際の映画作品を参考にすると理解が進むはずです。
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