主人公とは？ 条件や創作ヒントをかんたん解説

この記事は 2023年10月24日 に更新されました。

脚本の主人公は、脇役など他の登場人物とは一線を画す特別な存在です。その違いを理解しなければ、ストーリーの中心に位置する魅力的な主人公は作れません。

主人公だけが持つ資質、条件とはなんでしょうか。記事では、主人公とはどのような存在か、主人公が持ち合わせなければならない条件とはなにか、また実際に主人公を創作するヒントも紹介します。

主人公とは

主人公とは、物語の中心に存在し、ストーリーを展開させる存在です。主人公は一人であることが一般的ですが、バディものや恋愛もの、オムニバス形式などでは複数人存在することもあります。

男性であればヒーロー、女性であればヒロインと呼びます。また、主人公を演じる役者が主役です。

主人公の条件

主人公とその他の登場人物との違いは、ストーリーを進展させる力があるかどうかにあります。ストーリーとは、大雑把に言えば何かが不足している状態から、それを満たそうとして変化する様子を描くものです。

例えば、刑事ドラマでは犯人がわからない状態から真相を求めようとする様子を描いているし、恋愛ドラマでは、恋愛対象に出会ってから、その恋心がどこかへ落ち着くまでの過程を描いています。

このことから主人公は、「あれがしたい」「こうなりたい」などといった欲求を持たなければなりません。欲求を持つことが主人公の条件です。

主人公だけが持つ欲求

脚本家が主人公を決める際は、決め台詞を考えたり、クライマックスを想起したりするのではなく、どのような欲求を持たせるかを決めます。欲求の種類によって主人公のキャラクター性が左右されるからです。

『桃太郎』の主人公は老父母を幸せにしたいと望みます。この欲求が優しい人間性の礎となり、鬼退治に行くという行動の根拠となるのです。

このことからわかるように主人公の欲求は、そのまま物語のテーマになります。逆に言えば、主人公の欲求が決まらなければ物語は進展しません。

また、他の登場人物に欲求は不要です。複数の登場人物がそれぞれ欲求を持つとストーリーの方向性が定まりません。

欲求の決め方

主人公は作者の代弁者です。そのため、作者が一番に主張したいことを欲求として定めてください。

欲求と聞くと、食欲、睡眠欲、性欲、物欲などの原始的欲求を思い浮かべます。また、子供が野球選手になりたいと望んだり、大人が出世したいと野望を持つことなども欲求の一つです。

『桃太郎』では自分の祖父母を幸せにしたいという優しさが欲求です。『ローマの休日』では自由を満喫したいというアン王女の好奇心であり、『ジョーカー』では自分を馬鹿にした世間を見返したいという逆恨みのような怒りが欲求になります。

欲求を決める際のポイントは、できるだけ作者にとって身近な題材に着目することです。等身大の欲求からはリアリティーが生まれます。あまりカッコを付けすぎて立派な欲求にすると、主人公を理解すること自体が難しくなるでしょう。

欲求を伝えるタイミング

主人公の欲求は物語が展開する原動力です。脚本のテーマそのものだとも言えます。そのため、できるだけ早いタイミングで主人公の欲求を伝えるとストーリー展開がスムーズです。

しかし、あまり焦ってしまうと唐突に感じられます。まずは、主人公の人となりを伝えることが優先です。

先述したように、主人公の欲求はキャラクター設定に依る部分が少なくありません。そのため、まずはキャラクター描写に注力し、その後に欲求を伝えると自然な流れとして受け入れられやすいです。

『桃太郎』では、桃から生まれた赤ん坊が、おじいさんとおばあさんに愛情を込めて育ててもらい、立派な若者に育った結果、祖父母の幸せを願い鬼退治を決意します。このようにストーリー性を持って伝えることが、読者に受け入れてもらうためにも重要です。

欲求の伝え方

主人公の欲求は、セリフで伝えても良いし、アクション（行動）で伝えても問題ありません。メディアの特徴を考慮すると最適な伝え方を選択できます。

映画の場合は観客がじっくり見る環境が整っているのでアクションで暗示しても伝わります。『ローマの休日』のアン王女は、なし崩し的に、功名心を持つ新聞記者と行動を共にします。「自由になりたい」などとセリフで説明しませんが、その行動から欲求は観客に伝わります。

一方、テレビドラマは基本的に視聴方法が統一されていません。何かをしながら視聴する方も多い想定です。そのため、セリフではっきり欲求を宣言した方がわかりやすいと言われています。『MIU404 第4話 ミリオンダラー・ガール』では刑事役の主人公が「（容疑者の）青池透子と話がしたい」というセリフで欲求を表現します。

主人公の欲求を伝える際は、できるだけサラッとシンプルに伝えてください。くどくどと念押しして伝えると説明的になってしまい観客から拒絶反応がでます。

また、主人公の欲求は一つです。いくつもの欲求が存在すると、ストーリーがまとまりません。物語のテーマは一つであることと同じです。

まとめ

主人公は他の登場人物とは異なる重要な存在です。その条件は、欲求を持っていること。欲求とは物語を展開するために必要なテーマのようなものです。主人公は欲求を基本的に一つだけ持ちます。セリフやアクションなどによって読者へ伝え、彼らを物語の世界へ引き込むのです。