「ストーリー」という言葉の意味がなんとなく分かってくると、次に必ずぶつかる言葉があります。それが「ドラマ」です。よく聞く言葉ですが、いざ「ドラマって何?」と聞かれると、事件が起きればドラマなのか、感動すればドラマなのか、ケンカすればドラマなのか、意外と説明できないものです。
この記事では、脚本家として執筆する中で意識している考え方をもとに、脚本を書き始めたばかりの人が迷わないように、この「ドラマ」の正体をできるだけシンプルに整理します。結論から先に言うと、ドラマは「欲しい」と「うまくいかない」という2つの要素の掛け算で生まれます。これさえ押さえておけば、もう「何も起きない退屈な脚本」にはなりません。
目次
結論:ドラマは「誰かが何かを欲しがること」から始まる
まずは結論から。 ドラマとは、誰かが「何かを強烈に欲しがった瞬間」に生まれます。
- 成功したい
- 愛されたい
- 認められたい
- ここから逃げたい
- 大切な人を守りたい
欲しがるものは何でも構いません。 重要なのは、「誰も何も欲しがっていなければ、ドラマは1ミリも起きない」ということです。
初心者が陥る「出来事」の罠
脚本を書き始めるとき、多くの人がこう考えがちです。
- 大きな事件を起こそう
- 派手な展開を入れよう
- あっと驚く結末を用意しよう
でも、ドラマの中心はそこではありません。 どんなに派手な爆発が起きても、そこにいる人が「生きたい(助かりたい)」と願っていなければ、それはただの物理現象です。
まず見るべきは、出来事の大きさではなく「その人は今、何を欲しがっているか」です。
ドラマは「順調にいかない」から面白い
もし、主人公が欲しいものを簡単に、すぐに手に入れてしまったらどうでしょう? ……おそらく、見ていてあまり面白くないはずです。
ドラマは、「うまくいかない」からこそ生まれます。
ドラマが成立するための「3つの最低条件」
ドラマを作るのに複雑な理論はいりません。必要なのは、次の3つだけです。
- 誰かが何かを欲しがっている(目的・願い・執着)
- それを邪魔するものがある(他人・環境・自分の弱さ)
- 失敗するかもしれない(緊張感・リスク)
「欲しい」と願う。でも、邪魔が入る。 失敗するかもしれないけれど、それでも手を伸ばす。 この構造があるからこそ、物語は動き出します。
ドラマのゴールは「感情を動かすこと」
そもそも、なぜ私たちはドラマを見るのでしょうか? それは情報を得るためではありません。「感情を動かされるため」です。
- ハラハラする
- モヤモヤする
- イライラする
- 切なくなる
- ホッとする
どんな感情でも構いません。 観客の心が「何かを感じた」なら、それはドラマとして成功しています。
何も起きていなくても、ドラマはある
「ドラマ=派手な事件」ではありません。 たとえば、静かな部屋で二人が会話しているだけでも、ドラマは生まれます。
- 大きな決断をする
- 今まで言えなかったことを言う
- あえて「言わない」という選択をする
外側の出来事よりも、内側の葛藤(心の揺れ)のほうが、時には強いドラマになります。
ドラマに関するよくある質問
Q. 「ストーリー」と「ドラマ」はどう違いますか?
ストーリーは、登場人物がどのように変化したかという「人の変化」全体を指します。一方ドラマは、その変化が起きる途中で生じる「もがき」、つまり「欲しい」のに「うまくいかない」という葛藤の部分を指します。ストーリーが物語の骨格、ドラマはその骨格に肉付けする緊張感や感情の動きだと考えるとわかりやすいでしょう。
Q. 派手な事件がないとドラマになりませんか?
派手な事件は必須ではありません。重要なのは出来事の大きさではなく、「その人が今、何を欲しがっているか」と「それがなぜ簡単に手に入らないのか」です。静かな部屋で二人が会話しているだけのシーンでも、片方が今まで言えなかったことを言うかどうかで葛藤しているなら、それは立派なドラマです。
Q. 自分の脚本にドラマが作れているか、どう確認すればいいですか?
各シーンについて「誰が何を欲しがっているか」「それを邪魔するものは何か」「失敗する可能性はあるか」という3つの最低条件をチェックしてみてください。この3つが揃っていないシーンは、出来事は起きていてもドラマとしては成立していない可能性があります。好きな映画やドラマを観るときに同じ視点で観察する練習をすると、感覚が掴みやすくなります。
まとめ:ドラマ=「欲しい」×「うまくいかない」
いろいろ書きましたが、覚えるべき公式はこれだけです。
ドラマ = 「欲しい」 × 「うまくいかない」
「感動させなきゃ」とか「修羅場を作らなきゃ」と身構える必要はありません。 主人公に何かを欲しがらせて、それを思い切り邪魔してあげてください。
今日できる小さな練習
次に好きな映画やドラマを観るとき、一つだけ注目してみてください。
- 主人公は、何を欲しがっているか?
- なぜそれが、簡単に手に入らないのか?
この2つが見えれば、もうその作品の骨組み(ドラマ構造)は見えたも同然です。
ストーリーが「人の変化」だとしたら、 ドラマは、その変化が起きる途中の“もがき”のことなのです。


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