今野敏さんは、『隠蔽捜査』や『機捜235』など数多くの警察小説を手がけてきた作家です。警察組織の仕組みや現場の動きを題材にしながら、異なる立場にいる人物同士の考え方をぶつけて物語を動かす作品を長く発表しています。
2026年11月8日には、今野さんの小説『機捜235』を原作とする「今野敏サスペンス 機捜235Ⅲ」がBSテレ東で放送されます。この作品は2022年5月16日にテレビ東京系で初放送されたシリーズ第3弾です。
ここでは今野敏さんの経歴、代表的な原作作品、映像化のされ方を整理し、原作小説を脚本へ変えるときに参考になる点まで見ていきます。
今野敏さんの経歴
新潮社の著者プロフィールによると、今野敏さんは1955年北海道生まれです。上智大学在学中の1978年に「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞を受賞し、レコード会社勤務を経て執筆に専念しました。
大きな転機の一つが『隠蔽捜査』です。2006年に同作で吉川英治文学新人賞を受賞し、2008年には続編『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を受賞しました。
さらに2017年には「隠蔽捜査」シリーズで吉川英治文庫賞、2024年には日本ミステリー文学大賞を受賞しています。
実業之日本社のプロフィールでは、警察小説だけでなく武道小説にも定評があり、1999年から空手道今野塾を主宰していることが紹介されています。実際の組織や身体感覚に関心を持ちながら、エンターテインメントとして読みやすい物語に組み立ててきた作家だと分かります。
今野敏さんの代表作と原作作品
今野さんには複数の長期シリーズがあります。なかでも広く知られているのが、警察官僚・竜崎伸也を中心に据えた「隠蔽捜査」シリーズです。
新潮社は警察組織の内部を描く代表的なシリーズとして継続的に刊行しています。
ほかにも「東京湾臨海署安積班」「ST 警視庁科学特捜班」「警視庁強行犯係・樋口顕」「公安外事・倉島警部補」「機捜235」など、所属部署や捜査手法の異なるシリーズがあります。同じ「警察」を題材にしていても、主人公の立場を変えることで見える制度や人間関係が変わるのが特徴です。
文藝春秋の作家生活45周年インタビューでは、今野さん自身が、警察小説で悪役に置かれがちなキャリア官僚や公安をあえてその側から描くなど、「常套手段の逆」から発想することがあると説明しています。既存ジャンルの約束事を理解したうえで視点を反転させる方法は、長いシリーズを差別化する力にもなっています。
『機捜235』はどんな原作?
『機捜235』は、警視庁第二機動捜査隊を舞台にした作品です。若手の高丸卓也と、定年間近のベテラン刑事・縞長省一という年齢も経験も異なる二人がバディを組み、街で発生する事件に向き合います。
テレビ東京が2020年のドラマ第1作放送時に掲載した公式リリースでは、原作を短編集と説明しています。今野さん自身も、短編集がドラマでどのように料理されるのか興味があるとコメントしていました。
この発言からも、小説をそのまま映像へ移すのではなく、テレビドラマの尺や登場人物の関係に合わせた再構成が前提だったことが分かります。原作の魅力である縞長と高丸の対照的なバディ像を軸にしながら、映像では事件の流れやゲスト人物を一つの放送枠に収まる形へ組み直す必要があります。
映像化された今野敏作品
今野さんの警察小説は、テレビドラマとの相性がよく、複数のシリーズが映像化されています。「隠蔽捜査」「警視庁強行犯係・樋口顕」「ST 赤と白の捜査ファイル」「ハンチョウ」シリーズなど、原作に由来する人物や設定がテレビ作品として広く知られるようになりました。
テレビ東京では『機捜235』と「警視庁強行犯係・樋口顕」をそれぞれ映像化した後、2023年の連続ドラマ「今野敏サスペンス 機捜235×強行犯係 樋口顕」で二つのシリーズを交差させました。番組公式ページには、今野さんが「コラボとなればダブルで楽しみ」とコメントし、シリーズがさらに広がることへの期待を寄せたことが掲載されています。
原作シリーズの世界観や人物を守りつつ、映像側では別作品の人物を組み合わせ、新しい関係を作ることもあります。原作者が持つ複数シリーズの資産を、ドラマ独自の企画として再編集した例といえます。
今野敏さんの作風と物語の作り方
今野さんの作品には、警察という巨大な組織を描きながら、一人ひとりの立場や価値観をぶつける面白さがあります。刑事、管理官、官僚、公安、所轄など、同じ目的に向かっていても優先順位が違う人物を置くことで、会話や判断に自然な対立が生まれます。
2024年の文藝春秋のインタビューでは、今野さんは毎日同じペースで手を動かすことを重視し、自分の執筆スタイルを確立する重要性を語っています。また、主人公がシリーズを通じて成長すると、その時点の人物像に合う行動かどうかを毎回考えるとも話しています。
長期シリーズでは設定を固定するだけでなく、人物が経験によって変わった部分と変わらない核を両方管理する必要があります。今野さんの発言は、連続ドラマで人物の一貫性と変化を両立させたい脚本志望者にも参考になります。
脚本志望者が学べる点
原作を脚本にするとき、まず学びたいのは何を残せばその作品らしさが保たれるかを見極めることです。『機捜235』の場合、事件の細部だけでなく、経験豊富な縞長と若い高丸という対照的な二人の関係がシリーズの大きな軸になっています。
短編集を2時間ドラマにする場合、原作のすべてを同じ比重で映像化することはできません。そこで、人物関係の核を残し、事件の順序、登場人物、伏線の置き方を放送尺に合わせて再配置する発想が必要になります。
今野さん自身が短編集のドラマ化を「どう料理されるか」と表現した点は、脚色を単なる省略ではなく再構成として見るヒントになります。
もう一つは、立場の違いを対立に変えることです。今野作品では「誰が正しいか」だけでなく、所属する部署や役割によって判断が変わります。
脚本でも、人物ごとに役割と目的を与えれば、説明のためだけの会話ではなく、利害のずれから場面を動かせます。
最新の出演情報(2026年11月時点)
2026年11月8日19時から、BSテレ東で「今野敏サスペンス 機捜235Ⅲ」が放送されます。今野敏さん本人が出演する番組ではなく、今野さんの原作を映像化した作品の再放送です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 放送日時 | 2026年11月8日(日)19:00〜21:00 |
| 放送局 | BSテレ東 |
| 作品 | 今野敏サスペンス 機捜235Ⅲ |
| 初回放送 | 2022年5月16日(月)テレビ東京系 |
| 原作 | 今野敏『機捜235』(光文社) |
| 脚本 | 安井国穂、村川康敏 |
| 監督 | 児玉宜久 |
| 主演 | 中村梅雀 |
物語は、機動捜査隊の縞長省一と高丸卓也が男性遺体の発見をきっかけに捜査へ入り、厚生労働省の事務次官をめぐる誘拐事件へ発展していきます。ゲストとして増田貴久さん、若村麻由美さんらが出演します。
2022年のテレビ東京公式ページでは、第3弾の見どころとして、第一機動捜査隊の倉沢巧が加わること、縞長の記憶力と経験が複数の出来事をつないでいくことが紹介されていました。再放送では、原作のバディ像が2時間ドラマの事件構成にどう落とし込まれているかにも注目できます。
『機捜235Ⅲ』の共演者と制作スタッフ
主演の中村梅雀さんが縞長省一、平岡祐太さんが高丸卓也を演じます。第3弾では増田貴久さんが第一機動捜査隊の倉沢巧、若村麻由美さんが厚生労働省の事務次官・重田由紀恵を演じています。
脚本は安井国穂さんと村川康敏さん、監督は児玉宜久さんです。原作者の今野さんが作った人物と警察世界を、脚本・演出・俳優が2時間の映像作品へ組み直しているため、原作とドラマの役割分担を見る題材としても興味深い作品です。
参考にした情報
- BSテレ東「今野敏サスペンス 機捜235Ⅲ」2026年11月8日放送ページ
- テレビ東京「機捜235Ⅲ」公式ページ
- テレビ東京「今野敏サスペンス 機捜235」2020年公式リリース
- 新潮社「今野敏 著者プロフィール」
- 新潮社「隠蔽捜査」シリーズ特設サイト
- 実業之日本社「今野敏」著者プロフィール
- 文藝春秋「今野敏、作家生活45周年特別インタビュー」
よくある質問
今野敏さんはどんな作家ですか?
1955年北海道生まれの小説家で、『隠蔽捜査』『機捜235』『警視庁強行犯係・樋口顕』などの警察小説を数多く手がけています。1978年に新人賞を受賞してデビューし、吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞、日本推理作家協会賞などを受賞しています。
『機捜235』の原作者は今野敏さんですか?
はい。テレビ東京とBSテレ東の公式ページで、原作は今野敏さんの『機捜235』(光文社)と明記されています。
「機捜235Ⅲ」は新作ですか?
2026年11月8日のBSテレ東放送は新作ではありません。「機捜235Ⅲ」は2022年5月16日にテレビ東京系で初放送されたシリーズ第3弾です。
今野敏さんの作品から脚本づくりで学べることは?
人物の所属や立場の違いを対立へ変えること、長期シリーズで人物の一貫性と成長を両立させること、原作の核を残して放送尺に合わせて再構成することが参考になります。
まとめ
今野敏さんは、1978年のデビュー以来、警察組織とそこで働く人物を多彩な角度から描いてきた作家です。『隠蔽捜査』『警視庁強行犯係・樋口顕』『機捜235』など、映像化された原作作品も数多くあります。
『機捜235』では、ベテランと若手のバディという人物関係を核にしながら、短編小説の素材を映像作品として再構成しています。原作を脚本へ変えるときは、何を削るかだけでなく「何を残せばその作品らしさが保てるか」を見極める視点が重要だと分かります。

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