『シド・フィールドの脚本術』レビューと感想

脚本が学べる本

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「最高のアイデアがあるはずなのに、なぜか最後まで書き切れない」「設定はおもしろいはずなのに、途中で物語が迷子になってしまう」——脚本や物語を書こうとしたことがある人なら、誰しも一度はこんな悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。実は、筆が止まってしまう原因は、才能の問題ではなく、「物語を支える構造」を知るきっかけがなかっただけかもしれません。今回は、ハリウッドをはじめ世界中のクリエイターがデスクに置く、脚本術の名著『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと(シド・フィールドの脚本術)』をご紹介します。

脚本は「感覚」ではなく「構造」で書く

著者のシド・フィールドは、脚本作りを「建築」にたとえています。建物を建てるとき、いきなり壁を立てる人はいません。まず全体の設計図を描き、それに沿って組み立てていきます。脚本も同じで、いきなり書き始めるのではなく、まず全体の見取り図を用意することが大切だと、本書は説いています。

この見取り図にあたるのが、本書の核となる「パラダイム」という考え方です。映画の脚本を「第一幕:状況設定」「第二幕:葛藤」「第三幕:解決」の3つに分け、それぞれのページ数の目安まで示してくれます。この型があることで、書き手は迷うことなく物語を最後まで書き進めることができるのです。

NG例は、勢いだけで書き始めて、物語の半分あたりで「この先どう展開させればいいかわからない」と手が止まってしまうことです。良い例は、書き始める前に三幕構成の見取り図を作り、「どこで何が起こるか」を大まかに決めておくことです。断片的なテクニックを拾い集めるよりも、まず物語の背骨となる構造を学ぶことが、結果的に何百時間もの遠回りを防いでくれます。三幕構成についてさらに詳しく知りたい方は、三幕構成は料理と同じ!作り方を習得して脚本をレベルアップ!もあわせてご覧ください。

「アクションこそがキャラクターである」という考え方

「魅力的なキャラクターが作れない」という悩みに対して、本書はこう答えます。「人間とは、その人の行動(アクション)そのものである」。つまり、登場人物が頭の中で何を考えているかよりも、実際に「何をしたか」によって、その人物がどんな人なのかが伝わるということです。

本書で紹介されている「キャラクターの履歴書」や「ドラマ上の欲求」を一つひとつ書き出していく作業は、登場人物に血を通わせ、自分から動き出すような存在に育てていくための、地道だけれど確実な方法です。行動でキャラクターを描くという考え方は、当ブログのキャラクターの作り方が上達する三原則でも詳しく解説していますので、こちらも参考にしてみてください。

「中だるみ」を防ぐ「プロットポイント」という考え方

脚本を書いていて、多くの人がつまずくのが、全体の半分近くを占める「第二幕」です。物語の中盤になると、何を書けばいいのかわからなくなり、勢いが失われてしまう——これは初心者だけでなく、経験のある書き手にもよく起こることです。

本書は、物語の流れを大きく変える「プロットポイント」という考え方を示してくれます。あらかじめ「ここで物語の方向が変わる」という地点を決めておくことで、「今どこを書いていて、次に何が必要か」という迷いを減らすことができます。中だるみしやすい第二幕の構成については、当ブログの三幕構成シリーズでも取り上げているので、気になる方はあわせて読んでみてください。

本書を読むと、映画の見方が変わる

本書を読んだあとは、映画の見方が変わります。「脚本とは、映像で語られるストーリーである」という定義を理解すると、これまで何気なく見ていた名作映画の構成が、はっきりと見えてくるようになるのです。映画館に足を運ぶたびに、プロの技を吸収できるようになる——これは、物語を書く人にとって大きな財産になります。

本書で例として挙げられる映画は少し前の作品が多いのですが、そこで語られている「物語の構造」自体は、現代のヒット作やアニメにも共通する、時代を超えたルールです。「型」に従うことは、自分の個性を縛ることのように感じる方もいるかもしれません。しかし、本書の中でシド・フィールドは「パラダイムとは公式ではない。それは形(フォーム)であり、構造(ストラクチャー)である」と述べています。優れた脚本には、必ず強固な構造という土台があります。その土台を理解したうえでこそ、あなた自身の自由な発想やアイデアが、初めて「物語」という形になって、観客に届くのです。

『シド・フィールドの脚本術』に関するよくある質問

Q. 脚本を書いた経験がなくても読めますか?

はい、問題ありません。本書は脚本の基礎となる構造をゼロから解説しているため、これから脚本を書き始めたいという方にもおすすめです。最初は難しく感じる部分があっても、三幕構成という大枠だけ押さえておけば、読み進めながら理解が深まっていきます

Q. 「型」にはめると、自分らしい作品が書けなくなりませんか?

本書が紹介する「パラダイム」は、自由な発想を縛るための公式ではなく、物語を支えるための構造です。骨組みがしっかりしているからこそ、その上に自分らしいアイデアやセリフを安心して積み上げていくことができます。型を知ることは、むしろ個性を発揮するための土台になります。

Q. 一度読めば、すぐに脚本が書けるようになりますか?

本書を読むだけで、すぐに完璧な脚本が書けるわけではありません。ですが、「物語をどう設計すればいいか」という地図を手に入れることができます。地図があるだけで、書き進めるときの迷いは大きく減ります。実際に手を動かして書きながら、何度も読み返すことで、内容がより深く身についていきます。

まとめ:最初の一歩を、この一冊と共に

創作の悩みは、一人で抱え込みすぎると、「自分には才能がない」という誤った結論にたどり着いてしまうことがあります。しかし、才能がないのではなく、やり方を知らなかっただけ——そう思えるだけで、物語を書くハードルは驚くほど下がります。もし、いつか「納得のいく一本」を書き上げたいと願っているなら、世界中の先人たちが辿ってきたこの「地図」を、ぜひ手に取ってみてください。あなたの頭の中にある景色が、確かな物語として完成する日を楽しみにしています。

紹介した本と、脚本の書き方をさらに学べる本

今回ご紹介した『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと(シド・フィールドの脚本術)』に加えて、構成やセリフ作りについてさらに学びたい方には、以下の書籍もおすすめです。


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