脚本にドラマがない!と言われた時の対処法
この記事は 2022年3月1日 に更新されました。
シナリオスクールや脚本関連の書籍では「脚本にはドラマが必要」と言われます。しかしそれを念頭に脚本を書いたところで、結局ドラマ性が不足していると指摘を受けたことはありませんか。ドラマとはなにか、どうやって書けばいいのか、具体的な書き方のコツも合わせて紹介します。
脚本のドラマ性01:
ドラマが生まれる法則
「君の脚本にはドラマがない」ってダメ出しされた~
それはショックだね。ところで、カク子はドラマの仕掛けをちゃんと入れたのかな?


え、脚本さえ書けば自然とドラマが生まれるんじゃないの?
いや、ドラマは意識しないと生まれないよ。ドラマという言葉が身近すぎて、ちゃんと理解していなかったようだね


そうかも。シナリもん、ドラマについて教えて!
神話やおとぎ話の時代から、物語は娯楽として進化してきました。その際、特に重要視されたポイントがドラマです。ドラマはあるか、もっとドラマ性を高めることはできないかと手を加えられてきました。ドラマとは、観客の感動を呼び起こすために必要な要素ですが、そもそも「ドラマってなに?」と首をかしげる人も多いでしょう。そんな時は、物語をスポーツに置き換えると視点が変わってイメージしやすくなります。
例えばボクシング。昔、深夜放送のボクシング番組では無名の選手同士の試合が行われまていました。無名ゆえに選手のキャラクターは不明で、ファイトスタイルや置かれている立場の違いなどもわかりません。理解できるのは試合運びの優劣のみ。これでは観客は、どちらの選手を応援するか判断できず、見ていても眠くなるだけです。つまり情報量が少ないと共感できません。
- 近年、物語のドラマは進化した
- 情報が少ないと共感できない
無名選手のボクシングは、どうすればドラマチックになるでしょうか。たとえ選手の情報であっても単純にあれもこれもと増やすだけでは的外れです。試合をドラマチックに盛り上げるには、観客の共感を得やすい情報を厳選する必要があります。
例えば、一方が卑怯な手段を繰り返す選手、もう一方が実直で誠実な選手だったらどうでしょうか。人間は根源的に悪を許さず、善を望みます。そのため多くの人が後者の肩を持つと考えられます。善が悪を滅ぼした時、すなわち実直な選手が勝利した時には、自分の事のように喜ぶでしょう。その時の観客の目には、無名選手同士の試合がドラマティックに映るはずです。
- 根源的な共感はドラマを生む
そしてボクシングでは2人の選手が対立します。対立とは葛藤です。葛藤を一言で言えば争いですが、単純なファイト以外の要素も含みます。境遇や立場もその一つ。観客がそれらに共感すると、単なるボクシングが代理戦争の様相を呈するのです。
善悪に分かれたボクサーの場合、一方(善)を自分、もう一方(悪)を嫌いな上司や、喧嘩している友達などに投影します。観客は、自分自身が持つ極めて個人的な葛藤を、ボクシングの対立に置き換えるでしょう。そして勝敗によって得た感動の裏には必ずドラマが存在します。つまりスポーツや物語が演出した葛藤に観客が共感するとドラマが生まれるのです。
- ドラマとは観客の葛藤を置き換えられるもの
脚本のドラマ性02:
葛藤とは
ドラマに不可欠な葛藤とはなんでしょうか。映画「レオン」の主人公は、一家を惨殺された少女を助けるのか? それとも見捨てるのか? と葛藤します。このように、ある問題が発生したときの解決案をどれにしようか悩むことが葛藤です。また、葛藤は大げさに考えなくても日常にあふれています。
問題 | 解決案1 | 解決案2 |
---|---|---|
少女が助けを求めてきた | 助ける | 見捨てる |
明日の宿題やってない | 急いでやる | 諦める |
職場に嫌いな同僚がいる | 無視する | 仲良くなる |
夕飯何食べようか | 和食 | 洋食 |
人生は葛藤の連続です。しかし枚数制限がある脚本には、葛藤をのべつ幕なしに詰め込むことはできません。そのためテーマに則した葛藤から優先度の高いものだけを厳選します。その際、個々のエピソードに流されないよう注意しましょう。単発で面白い葛藤を書けたとしても、前後の因果関係がなければ脚本全体の統一感が失われてしまうからです。
- 葛藤は厳選して優先順位をつける
脚本のドラマ性03:
葛藤のつなげ方
優れた脚本は「次はどうなるのか」と興味をひきつけます。それにひきかえアマチュア脚本の多くは、読み続けることが苦痛になるほど退屈です。この差は葛藤のつなげ方にあります。
葛藤はエピソード毎に存在します。その中で「Aをして、Bをして、Cをして、Dをした」というつながりの脚本では、Aエピソードを見た視聴者が、必ずしもBエピソードを見たいとは思わないでしょう。エピソード毎に関連性が無く、一つの物語としてつながらないと観客は興味を示さないからです。
一方、「Aをしたから、Bをするはめに陥り、さらにCを避けられなくなり、結局Dに挑戦した」という風にエピソードをつなげれば、Aを見た視聴者は「次はどうなるのか?」と興味がわきます。これはAとB、BとC、CとDといったエピソード(葛藤)のつながりに因果関係があるからです。
以下は桃太郎の例です。原因となるエピソードが結果を生み、その結果が次のアクションを起こすための原因へとつながっていることがわかります。
原因 | 結果 |
---|---|
村を襲われたから | 鬼退治に旅立ち |
旅に出たから | 仲間と出会い |
仲間がいたから | 鬼に勝てた |
最終的には、脚本のどこか一箇所でも欠けると全て崩れるほど、過不足が無く絶妙なバランスで葛藤をつなげることが理想です。そうすれば観客をラストの大きな感動まで導くことができます。
- 葛藤は因果関係でつなぐ
脚本のドラマ性04:
執筆前の下準備
葛藤を抽出して因果関係でつなげば、かなり良質な脚本に仕上がります。しかしアマチュア脚本の多くは、内容が散漫になりがちです。これは書き進めるうちに当初決めたテーマや大枠構成を見失ってしまうから。そうならないためにも下準備をしてから書き出しましょう。具体的には下記項目をメモすればOKです。桃太郎の記入例を参考にしてください。
項目 | 記入例 |
---|---|
主人公 | 桃太郎 |
敵対する人物 | 鬼 |
対立する原因は? | 災いをもたらすから |
葛藤の末に選ぶ道は? | 鬼退治 |
主人公の望みは? | 村の平和 |
下準備をしておけばストーリーに一本筋が通ります。それを軸にアイデアを広げればきっと面白い脚本が書けるはずです。
- 下準備をすると自由にアイデアを考えられる
まとめ
優れた脚本にはドラマがあり観客が共感できます。具体的には登場人物が葛藤する姿に共感するのです。通常、葛藤はあらゆる場面で発生しますが、脚本に必要な部分だけ厳選して圧縮しなければなりません。そのためには各エピソードを因果関係でつなぎ合わせて不要な部分をふるいにかけます。書き進めるうちに初心を忘れないよう前提条件を明記して下準備すると安心です。
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