良い脚本を書くには、作者自身が楽しまなければなりません。書いている本人が楽しめない物語を、他の人は楽しめるはずがないからです。
記事では、楽しく脚本を書くための秘訣を3つお伝えします。この秘訣を参考にしていただければ、書き手であるあなたはもちろん、結果として、読者も楽しめる物語が書けるようになるでしょう。
脚本家として書くことに行き詰まったとき、私はいつもこの3つの秘訣に立ち返ります。この記事では、面白い部分から書き始める考え方、敵役を早めに登場させて物語の目標をはっきりさせる方法、そして読者の興味を引き続けるための謎のちりばめ方を紹介します。
目次
脚本を楽しく書く秘訣1_
面白い部分から書くこと

脚本を書くとき、ストーリーを思いつくまま最初から書いている人は注意してください。なぜなら、そのような書き方では前置きが長くなってしまい、書いている本人も退屈してしまうからです。
脚本を書きなれない人は、とにかく「知ってもらいたい」という気持ちが強く出てしまいます。主人公は複雑な家庭環境に育っており、こういう考えを持っている。宇宙が舞台のSFで、もしくは現代のニューヨークの病院が舞台でなど、凝った設定であるほど、書き出し(=前置き)が重くなりがちです。
しかし、物語の中で面白い部分は前置きではありません。何か事件が起こってからが面白いのです。主人公の家庭環境や舞台設定などの説明が続き、なかなか事件が起きないと退屈してしまいます。
脚本家は、頭の中のストーリーを一度全部書き出して、一番書きたい部分(おもしろいと思う部分)から書くようにすると良いでしょう。細かい設定は、後々必要になったときに小出しにすればOKです。
脚本を楽しく書く秘訣2_
敵役は早めに登場させること

脚本を楽しんで書くには、物語の目標を早めに設定することがコツです。例えば、マラソンでもゴールがわからずダラダラ走るより、10キロ先にゴールがあるとわかって走るほうが、楽しく走れます。同じように、脚本でも目標を早めに決めておくことが大切なのです。
脚本で言う目標とは、簡単に言えば敵役(かたきやく)を攻略するポイントを指します。つまり、物語の早い段階(開始10分以内くらい)で敵役を登場させることが大事なのです。
ちなみに、敵役は人間とは限りません。超常現象や隕石、運命などさまざまな姿かたちをしています。
もし、いつまでたっても主人公が立ち向かうべき敵役が登場しなければ、作者といえども、物語が進む方向を見失ってしまうかもしれません。
迷走した挙げ句、最後まで書ききれずに途中で諦めてしまっては最悪です。また、楽しんで脚本を書くことも難しいでしょう。
脚本を楽しく書く秘訣3_
謎をちりばめること

前段で紹介した2つの秘訣を取り入れると、いわゆる、つかみに成功して、脚本の読者の興味を得られるでしょう。また、脚本家であるあなたの執筆テンションも上がるはずです。
しかし、そこで勢いが終わっては意味がありません。引き続き、あなたの脚本を読んでもらい、脚本家自身のテンションを維持するには工夫が必要です。
その工夫とは、謎をちりばめることです。
人間には、謎があれば真相を知りたがる習性があります。事件の犯人や動機を知りたがったり、小包の中身を気にしたりするのもそのためです。
もし真相を知りたければ、脚本を読み続けるしかないという仕組みを作れば、読者の興味を引き続けられます。
脚本に盛り込む謎は大小さまざま。物語のオチともいうべき大きな謎はもちろん、シーンとシーンを繋ぐ小さな謎も存在します。
- ○学校・教室
- 太郎、花子に向かって手を挙げる。
- 花子、殴られると思い身構える。
- ○道
- 一人でとぼとぼと下校している太郎。
- 太郎、自分の手をしげしげと見る。
- 太郎「(悲しげな表情)」
上記の例では、太郎が花子を殴ったのか殴っていないのかという謎があります。このように、小さな謎を接着剤のように使うことで、シーンからシーンへ読者の興味をひっぱることができます。
例えば、このシーンの最後に太郎のセリフで「花子を殴ってしまった……」と説明してしまうのはNG例です。良い例は、上記のように太郎の悲しげな表情だけを見せて、何があったのかを語らないことです。説明を省くことで読者の中に「なぜ?」という疑問が生まれ、その答えを知りたくて次のシーンへ読み進めたくなります。
また、小さな謎でシーンが終わると、次のシーンが作りやすくなる効用もあります。このようなテクニックを使うことで脚本家も楽しく執筆できるはずです。
脚本を楽しく書くことに関するよくある質問
Q. 面白い部分から書き始めると、設定の説明が不足しませんか?
心配はいりません。設定の説明は、物語が進む中で必要になったタイミングで少しずつ加えていけば十分です。先に面白い部分を書いてしまうことで、後から「ここで補足が必要だ」という箇所が自然と見えてきます。
Q. 敵役が思いつかない場合はどうすればいいですか?
敵役は人間に限りません。災害や時間、社会の仕組み、主人公自身の弱さなど、主人公の前に立ちはだかるものであれば敵役として機能します。「主人公が乗り越えなければならない壁は何か」を考えると、敵役のヒントが見つかりやすくなります。
Q. 謎を入れすぎると、話が複雑になりすぎませんか?
謎は大きなものを1つ、小さなものをいくつか、というバランスで考えるとまとまりやすくなります。すべての謎を同時に解こうとせず、シーンごとに小さな謎を1つずつ提示し、回収していくようにすると、複雑になりすぎずに読者の興味を保てます。
まとめ
ある晩、最高に面白い物語のアイデアが浮かんだとしても、まずは冷静になってください。とりあえず、アイデアの全てを書き出し、最も面白い部分を冒頭に持ってきます。
そして、物語の主人公が最終的に攻略するべき敵役を探すのです。もし、存在していなければ作らなければなりません。
実際に脚本を書くときに全てを語ってしまうと飽きられてしまいます。伝えることは小出しにしつつ、大小さまざまな謎を脚本にちりばめて、読者の興味を引っ張り続けるのです。
脚本家として執筆に詰まったときは、「面白い部分から書く」「敵役を早く出す」「謎をちりばめる」という3つの秘訣のうち、どれが足りていないかを見直すようにしています。この3つを意識するだけで、書くこと自体がもっと楽しくなり、その楽しさは読者にもきっと伝わります。
脚本の書き方をさらに学べる本
構成や謎の仕込み方についてさらに深く学びたい方には、以下の書籍もおすすめです。


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