脚本の結末をどう締めくくるかという悩みは、多くの方が抱えています。結末が悪いと観客の印象に残らないし、作品の評価が低くなることもあるからです。何より観客が満足しません。そんな悩みを抱える方に、結末を書くときのコツをお伝えします。
脚本家として数多くの作品を書いてきましたが、結末のクオリティで作品全体の評価が決まることを何度も実感してきました。この記事では、結末を最初に決めておくべき理由、結末へ向かう道筋にひねりを加える考え方、そして「カット」と「ミスディレクション」という2つの基本テクニックの使い方を紹介します。
目次
結末は最初に決めておく

ストーリーのアイディアを思いついて構成を組み、脚本を書き出す時、最初に結末まで決めてしまうタイプと、成り行きで決めるタイプがあります。
あなたはどちらのタイプでしょうか。
あるプロの脚本家は、脚本とは精巧なスイス時計のようなものだといいます。人を感動させる精密機械であり、結末を含め、全てのパーツを論理的に配置しなければならないというのです。
これは、素晴らしい脚本を書くには細部まで緻密に計算する必要があるということを意味します。つまり、書き始める前に結末まで決めておくべきだということです。
結末を魅力的に見せるには、工夫をしなければいけません。成り行きで行き着いた直線的な結末では、それは難しいでしょう。
もちろん、柔軟性は脚本家にとって大切な要素です。書き進めるうちにさらに良い結末を思いついたら変更してもかまいません。
しかし、脚本執筆のスタートを切る時にはゴールが見えていた方が何かと都合がいいのも事実です。
結末へ続く道にひねりを加えよう

「結末に工夫を」と言ったものの、具体的にどうすればいいか見当もつかない人もいるでしょう。繰り返しですが、観客は直線的で素直すぎるストーリーだと満足しません。
例えば、トンネルの先にご褒美が用意されているとして、直線だとゴールに何があるかバレバレです。もし、それが興味のないものなら? 相手は早々にがっかりしてしまうでしょう。
しかし、クネクネした曲線パイプならどうか。どんなご褒美が用意されているか気になって、自らパイプに入ってきます。少なくともご褒美を目の当たりにする瞬間(結末)までは、期待を持てます。
これが観客の興味をつかんでストーリーに引き込むということです。このように脚本を書く時には、結末に至るまでにひねりを加える必要があります。
例えば、「主人公が努力して、最後に成功する」という結末をそのまま直線的に見せてしまうのはNG例です。良い例は、成功までの道のりに思いがけない障害や別の選択肢を用意し、観客に「次はどうなるのだろう」と思わせながら進めることです。同じ結末でも、そこへ至る道筋にひねりがあるかどうかで、観客の満足度は大きく変わります。
カットとミスディレクション

脚本の結末を魅力的に見せるひねりのテクニックから、今回は使いやすくて基本的な2つの手法をお伝えします。
脚本の結末を魅力的に見せるテクニック1_カット
カットは、エピソードを盛り上がりの絶頂で切る手法です。例えばクイズが出題され、その回答を秘密にされると興味は途切れません。脚本も同じです。
脚本の結末を魅力的に見せるには、前フリを仕込んでオチを明かすのを引き伸ばします。それこそ、脚本の最後の一行まで観客の興味を引くのです。
そのためには、まずエピソードを最後まで全部書き出し、最後の答え部分が明かされる手前でカットします。そして別の角度から本質に迫るのです。そしてまたカット。その繰り返しです。さまざまな角度から一点(結末)を攻めるので、結末に説得力が増すという効果もあります。
また、ストーリーを良いところでカットすると登場人物(主に主人公)の感情や体は、最高潮の状態で途切れます。観客も同様にテンションが高い状態が維持されるので興味が途切れないのです。
脚本の結末を魅力的に見せるテクニック2_ミスディレクション
脚本の結末を魅力的に見せるもう一つの方法は、ミスディレクションという方法です。ミステリーなどでよく使われる手法であり、例えば、真犯人は他にいるのに、読者の注意を別の人物に向けさせるための証拠やエピソードをちりばめたりします。
ミスディレクションを脚本執筆に取り入れるには、まず結末を決める必要があります。そこから逆算して意図的に誤解を招く方向に話を逸らしてください。
この時、最終的に正しい結末へ遠回りをしてもたどり着けるかどうかという点にも気をつけましょう。
あとは、ゴールにつながる(と思わせる)間違った手がかりや、登場人物が意味深なセリフをしゃべったりする方法もあります。
読者の気持ちになってみよう

カットやミスディレクションは、読者をだます行為です。実生活と違い、脚本の世界では、上手にだますほうが良いとされています。
プロは、ストーリーの結末が読者の予想通りにならないよう、ひねりを加えるのが上手です。一方、無理に引き伸ばし過ぎて読者の反感を買うこともあります。
観客が満足するボーダーラインはどう見極めるべきか。それは自分が読者だったらどう感じるか、という点に尽きるでしょう。
多くの映画を見てきた人ほど、気持ちのいいだまされ方を多く体験しているはずです。その時の感情を参考にして脚本執筆に役立ててください。
脚本の結末に関するよくある質問
Q. 結末を先に決めても、書いている途中で変更していいですか?
もちろん変更して構いません。結末を先に決めておく目的は、ゴールを意識しながら逆算して伏線やひねりを配置することです。書き進めるうちにもっと良い結末を思いついたら、そちらを採用し、必要に応じて伏線も調整しましょう。
Q. カットとミスディレクションは両方使う必要がありますか?
必ず両方使う必要はありません。カットは「最高潮で話を切る」、ミスディレクションは「注意を別の方向へ逸らす」という、それぞれ異なる効果を持つテクニックです。物語の場面ごとに、どちらが効果的かを判断して使い分けてください。
Q. 結末のひねりが「やりすぎ」になっていないか、どう判断すればいいですか?
自分が観客だったらどう感じるかを基準に考えましょう。ひねりが多すぎると、強引な印象を与えて反感を買うことがあります。最終的に伏線が回収され、結末に納得感があるかどうかを客観的に見直すことが大切です。
まとめ
脚本の結末はとても大切です。思いつくままに書いても読者を満足させることはできません。上手に話をそらしたり一部を隠したりする工夫が必要です。それが結果的に観客の満足に結びつきます。
脚本家として結末を書くときは、まずゴールを決め、そこへ向かう道筋にカットやミスディレクションといったひねりを加えることを意識しています。観客を「上手にだます」工夫こそが、最後まで興味を持ってもらうための鍵です。今回紹介したテクニックを、ぜひ自分の脚本に取り入れてみてください。
脚本の書き方をさらに学べる本
構成や結末の書き方をさらに深く学びたい方には、以下の書籍もおすすめです。


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