脚本に登場するキャラクターは、必ず「欲求」を持っています。お金が欲しい、認められたい、生き残りたい——そうした欲求が、キャラクターを動かし、物語を前へ進める原動力になります。だからこそ、キャラクター設定を考える最初の段階で、この欲求をはっきりさせておくことが大切です。
この記事では、人間なら誰もが心の奥に持っている「8大欲求」を、映画の具体例とあわせて紹介します。あなたがキャラクターの目的に悩んだときも、この8つの欲求の中から手がかりが見つかるはずです。
目次
キャラクター設定を魅力的にする人間の8大欲求

人間の8大欲求は、キャラクターの目的(欲求)を考えるときの強い味方になります。誰もが心のどこかで感じたことのある欲求だからこそ、観客や読者の共感を呼びやすいのです。
物語は、キャラクターが何かを欲しがるところから動き出します。欲求がなければ、キャラクターは行動する理由を持てず、物語も始まりません。
ここでは、多くの人が共感できる人間の8つの欲求を紹介します。
- 生き残りたい
- 食欲を満足したい
- 危険を回避したい
- 性的に満足したい
- 安全に暮らしたい
- 優越感を得たい
- 愛されたい
- 承認欲求を満たしたい
キャラクター設定の考え方:欲求1_
生き残りたい

「生き残りたい」「できるだけ長く生きたい」という思いは、誰の心にもあるものです。ただ生き延びるだけでなく、「せっかく生きるなら、意味のある人生にしたい」という願いも、この欲求に含まれます。
例えば、雪山で遭難した人たちの実話を描いた映画『生きてこそ』や、ホロコーストを生き抜いた人々を描いた『シンドラーのリスト』は、この欲求が物語の中心にある作品です。
キャラクター設定の考え方:欲求2_
食欲を満足したい

「おいしいものを食べたい」という欲求は、誰にとっても身近で、共感しやすいテーマです。だからこそ、映画やドラマでは「食」をテーマにした作品が、繰り返し作られています。
中年男性がただ食事をするだけのドラマ『孤独のグルメ』が10年以上続いているのも、この欲求の力を物語っています。映画『かもめ食堂』や『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』も、食欲という欲求がテーマになっている作品です。
キャラクター設定の考え方:欲求3_
危険を回避したい

「怖いものから逃げたい」「危険を避けたい」という感覚は、人間が古くから持っている本能です。幽霊、強盗、災害、宇宙人——映画の中では、さまざまな「恐怖の対象」が描かれてきました。
映画『宇宙戦争』や『シャイニング』のように、サスペンスやホラーのジャンルは、この「危険を回避したい」という欲求と特に相性が良いといえるでしょう。
キャラクター設定の考え方:欲求4_
性的に満足したい

性的な欲求は、誰の中にもある自然な欲求のひとつです。人前では話題にしにくいテーマだからこそ、物語の中でこの欲求を持つキャラクターには、観客がひそかに共感を寄せやすくなります。
セックスというテーマを正面から描いた映画『セックスと嘘とビデオテープ』や、際どい描写の中に芸術性を見出した『ラストタンゴ・イン・パリ』などが、この欲求を扱った作品の代表例です。
キャラクター設定の考え方:欲求5_
安全に暮らしたい

「安全で快適な暮らしを守りたい」という欲求は、私たちが毎日の生活を積み重ねる原動力です。映画のキャラクターも同じですが、この欲求をそのまま描くだけでは平凡に見えてしまいます。「その欲求を満たす手段」が独特だったり、切り口が新しかったりすると、物語として面白くなります。
例えば、映画『ミナリ』の主人公は、見知らぬ土地を開拓して家族の暮らしを守ろうとします。『アナザーラウンド』に登場する教師たちは、お酒の力を借りてマンネリ化した生活に変化を起こそうとします。どちらも「安全に暮らしたい」という同じ欲求から、まったく違う物語が生まれている例です。
キャラクター設定の考え方:欲求6_
優越感を得たい

「周りより良い暮らしをしたい」「優れた人間だと思われたい」というのも、人間ならよく抱く感情です。「隣の芝生は青く見える」という、ちょっとしたねたみや嫉妬が根っこにあることも多いですが、これもまた、誰もが心の中に持っている自然な感情です。
映画『ルームメイト』は、同居人が徐々に自分と同じ髪型・服装になっていく恐怖を描いた作品です。『ゆりかごを揺らす手』は、逆恨みの感情が物語の出発点になっています。
キャラクター設定の考え方:欲求7_
愛されたい

「愛されたい」という欲求は、8大欲求の中でもいちばん多くの人の心に響くテーマでしょう。誰もが一度は感じたことのある感情だからこそ共感を得やすい一方で、ありふれた展開に見えてしまうリスクもあります。
NG例は、「2人が出会って、惹かれ合って、結ばれる」という流れだけをそのまま描いてしまうことです。良い例は、映画『タイタニック』のように「沈没する船」という極限状況をかけ合わせたり、『エターナル・サンシャイン』のように「記憶を消す」というSF設定を組み合わせたりすることです。「愛されたい」という普遍的な欲求に、もうひとつ別の設定をかけ合わせることで、ありふれたテーマでも新鮮な物語になります。
キャラクター設定の考え方:欲求8_
承認欲求を満たしたい

SNSで誰でも気軽に発信できる今の時代、「認められたい」「注目されたい」という承認欲求は、誰にとっても身近な感情になりました。この欲求のために行動する主人公を描けば、多くの観客が「自分にも似たような気持ちがある」と感じてくれるはずです。
過度な承認欲求に飲み込まれていく恐怖を描いた『シック・オブ・マイセルフ』は現代的な作品ですが、この欲求自体は新しいものではありません。『キング・オブ・コメディ』や『ジョーカー』のような名作も、古くから承認欲求をテーマに描いてきました。
キャラクターの欲求設定に関するよくある質問
Q. 8大欲求は、必ず1つだけ選ばないといけませんか?
いいえ、複数を組み合わせてもかまいません。例えば「安全に暮らしたい」と「優越感を得たい」のように、2つの欲求を同時に持たせることで、キャラクターの行動に矛盾や葛藤が生まれ、より人間らしく見えるようになります。
Q. 「欲求」と「目的」の違いは何ですか?
欲求は、キャラクターの心の奥にある根本的な感情です。一方、目的はその欲求を満たすための具体的な行動やゴールを指します。例えば「愛されたい」が欲求なら、「あの人に告白する」が目的になります。まず欲求を決めてから、それを満たすための目的を考えると、キャラクターに芯が通ります。
Q. ありふれた欲求がテーマでも、面白い物語になりますか?
なります。8大欲求はもともと、誰もが共感できるものばかりです。大切なのは欲求そのものより、その欲求をどんな設定や状況とかけ合わせるかです。見せ方を工夫すれば、ありふれたテーマでも新鮮な物語に仕上がります。
まとめ:欲求からキャラクターの行動原理を決めよう
脚本のキャラクター設定を考えるときは、まず彼らの行動原理となる「欲求」を決めておくことが大切です。今回紹介した8大欲求は、誰もが心のどこかで感じたことのあるものばかりなので、読者や視聴者の共感を得やすいというメリットがあります。あなたのキャラクターにも、この8つの欲求の中からひとつ、あるいは複数を組み合わせて当てはめてみてください。そこに、設定や状況のひとひねりを加えることで、より魅力的な人物像が見えてくるはずです。
脚本の書き方をさらに学べる本
キャラクター作りについてさらに学びたい方には、以下の書籍もおすすめです。


コメント