あらすじの書き方で迷ったら結末(オチ)から考える![脚本/小説/初心者OK]
この記事は 2022年3月1日 に更新されました。
あらすじは脚本や小説の本文を要約した文章です。脚本や小説、Amazon商品ページやウィキペディア、読書感想文など、メディア(媒体)によってあらすじの書き方は異なります。この書き方の違いがあらすじの理解を難しくしてきました。しかしどんなメディアにも対応可能なあらすじの書き方は存在します。記事ではあらすじを迷わずに書くための考え方や手順について解説します。
目次
結末(オチ)から考えるあらすじの書き方1:
前提条件
あらすじの書き方を身につけるには前提条件があるよ
あらすじは本文を要約する文章です。そのため物語が完結していなければあらすじは書けません。この前提はあらすじを書くための必須条件です。
また「脚本や小説を書き出す前のラフスケッチとしてあらすじを書く」という人がいます。しかしストーリー全体を見渡すために用意する文章はプロットであり、あらすじとは別物です。あらすじは読者のため、プロットは作者のために書く文章と考えてください。
- あらすじは物語が完結していないと書けない
結末(オチ)から考えるあらすじの書き方2:
手順
あらすじの書き方はルーティンにすると迷いません。その手順は以下の通りです。メリットや詳細は後述します。
あらすじの書き方の手順
- 結末(オチ)からさかのぼってエピソードを並べる
- 時系列に沿ってあらすじを書く
昔話『桃太郎』では「桃太郎は村に宝を持ち帰った」エピソードが結末(オチ)です。鬼との戦いはクライマックスですが、結末ではないので注意してください。色々あって結局こうなったという出来事が結末であり、あらすじを考えるスタートラインです。
つぎに結末からエピソードをさかのぼります。各エピソードを因果関係でつなげるのですが「なぜ」「どうやって」と自問すると考えやすいです。たとえば「桃太郎は村に宝を持ち帰った」のは「どうやって?」と考えると、「桃太郎が鬼を退治したから」と因果関係がつながります。これを冒頭エピソードまで繰り返します。この時、因果関係でエピソードがつながらなければストーリー構成が破綻している可能性があるので気をつけてください。
桃太郎のエピソードを結末から並べた例
- 桃太郎が、村に宝を持ち帰った(どうやって?↓)
- 桃太郎が、鬼を退治したから(どうやって?↓)
- 桃太郎は、犬猿雉に協力してもらったから(どうやって?↓)
- 桃太郎は、きびだんごで犬猿雉を仲間にしたから(どうやって?↓)
- 桃太郎は、おばあさんからきびだんごを貰ったから(なぜ?↓)
- 桃太郎は、鬼退治に行くと決意したから(なぜ?↓)
- 桃太郎は、村の平和を守りたかったから(なぜ?↓)
- 桃太郎は、村に住むおじいさんとおばあさんに大切に育てられたから(なぜ?↓)
- 桃に入った桃太郎が、おじいさんとおばあさんに拾われたから

エピソードを書き出だすと物語を整理できるよ
次に、書き出したエピソードを時系列に沿ってあらすじにします。因果関係で書き出したエピソードを逆に読むと、自然と時系列に沿ったあらすじが書けるでしょう。これがあらゆるメディアに通用するあらすじの書き方です。
桃太郎のあらすじ例
桃から生まれた桃太郎はおじいさんとおばあさんに大切に育てられました。村は鬼の脅威にさらされていました。そこで村の平和を守りたい桃太郎は鬼退治に出かける決意を固めます。おばあさんから貰ったきびだんごで犬猿雉を仲間に入れた桃太郎は、力を合わせて凶暴な鬼に立ち向かいます。やっとの思いで鬼をやっつけた桃太郎は宝を村に持ち帰りました。(156文字)
ちなみに、あらすじの文字数はメディアによって様々です。文庫小説のあらすじ文字数は170~200文字程度、映画DVDパッケージのあらすじは300~150文字程度です。一方で、脚本コンクールでは「800文字程度であらすじを書く」と規定で決まっています。
- あらすじは結末(オチ)から逆順に考える
- なぜ?どうやって?でエピソードがつながるように意識する
オチまで書くべきか
あらすじで「オチまで書いていいのか」と悩むかもしれません。例えば、販売目的の小説やAmazonの商品紹介ページに掲載するあらすじには、購入を促すためにオチを書きません。
一方、シナリオコンクールや小説公募に応募するあらすじにはオチまで書きます。むしろあらすじのオチを隠すと読まれないケースもあるので気をつけましょう。
インターネット上では読者に配慮してオチを明記しない風潮があります。その一方「ネタバレあり」と注意喚起をしてからオチまで書くブログがあったり、ウィキペディアではオチまで書くように推奨されたり、あらすじにオチまで書くケースも少なくありません。
学校などで課題として出される読書感想文でもあらすじを書くことがあります。その場合、必要に応じてオチを書き分けますが決まったルールはありません。
オチを書くにしろ書かないにしろ、上記で紹介した「結末から考えるあらすじの書き方」は活用できます。あらすじを全て書き終えた後でオチが不要なら削ればいいのです。
結末(オチ)から考えるあらすじの書き方3:
メリット
結末から考えるあらすじの書き方には3つのメリットがあります。まず1つ目は一貫性を生むこと。2つ目は読みやすいこと。最後は客観性が持てることです。
メリット1_一貫性を生む
苦労して書き上げた脚本は、作者にとって我が子のように愛おしいもの。その魅力を一つ残らず伝えようと、あらすじにはエッセンスを全て詰め込みたくなります。
しかし文字数が制限されるあらすじでは主張がブレる原因です。一貫性が失われてしまい、魅力が伝わりません。
作者は脚本が持つ全ての魅力を伝えたがりますが、読者は一番の魅力だけを知りたがります。最も魅力的なエピソードが伝われば付随する各エピソードにも必然的に興味が行き渡るでしょう。すなわち本文に興味が向きます。これがあらすじが正常に機能している状態です。
最も魅力的であるメインテーマのエピソードは主人公を中心に描かれます。結末(オチ)から因果関係によってエピソードをつなげる手法では、主人公が浮き彫りになるはずです。そのため一貫性を備えた魅力的なあらすじが、必然的に書き上がります。
- あらすじは、メインテーマに絞り一貫性を持って書く
メリット2_読みやすい
脚本や小説の文章は、面白さ追求のために工夫をこらします。構成を複雑にしたり、秘密を隠したり、一見シンプルなストーリーでも文章に演出の跡は残るものです。
しかしあらすじにおいて同様の演出をほどこすと、エピソードのつながり方が不自然で、読みにくく感じられます。あらすじが読みにくいと本編までたどり着いてもらえません。
原因は文字数の違いです。数万字の本編を800字程度に圧縮すれば、文章は簡素になります。スカスカのあらすじに本編と同じ演出を当てはめても説明不足で破綻が生じるのです。
あらすじの文章は、読みやすさを追求してください。その際、時系列に並んだ文章が最適です。冒頭で天地人(いつ、どこで、だれが)を明らかにすれば、さらに読みやすく感じられるでしょう。エピソードを結末から並べると自然と時系列に揃うので、読みやすいあらすじが容易く書けるはずです。
- あらすじは読みやすさ重視!無駄な演出不要
メリット3_客観性が持てる
脚本家や小説家の中には登場人物になりきって主観的に執筆する人がいます。それと同時に客観性も併せ持つことで強固なストーリー構造を確立するのです。2つの視点をバランス良く持つと優れた作品を生み出せます。
しかし、2つの視点を併せ持つことは難しく、多くの見習い作家が主観に偏って執筆しがちです。そのため物語に破綻があっても、気が付かずにリリースしてしまいます。
主観と客観を切り替えるスイッチがあれば便利ですが、人間の感情は簡単に制御できません。ある脚本家は、2~3日の冷却期間を経てから自作を俯瞰するといいます。しかし時間的な余裕がなかったり、自制心が弱かったりする場合は難しいでしょう。
そんな中、結末からあらすじを考える作業は、主観を客観に切り替えるきっかけとなります。通常、あらすじは冒頭から順に追うものであり、結末からさかのぼって考えません。このある種の異常な作業は感情に頼るとままならず、ロジカルに考える必要があるため、客観性を取り戻せるのです。

客観的な視点を持つと、破綻した箇所はもちろん、掘り下げて書くべきポイントも明確になるよ。その気付きは、そのままリライトポイントに置き換えられるんだ
- 客観的な視点が強制的に手に入る
- 新たな気付きはリライトポイントに置き換えられる
まとめ
あらすじの書き方で迷う人は、まず結末(オチ)を書いてください。更にさかのぼってエピソードを書き出した後、改めて冒頭から書き直します。するとメインテーマを中心に据えた一貫性のある文章が書けるはずです。また時系列に整った読みやすい文章が書き上がります。さらに思考順序を通常と逆にしたことで客観性が生まれ、自作を冷静に見直すきっかけにもなるでしょう。その際、発見した破綻箇所や改善点はリライトの道標となるはずです。
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