価値のない脚本を書かないためにできること
この記事は 2023年10月11日 に更新されました。
脚本は、観客のために書きます。そのためには、彼らが何に対して充足感を感じて満足するのかを考えるのです。初心者には取っ掛かりがなく難しい作業かもしれません。確かに、完璧な答えはありません。しかし、先人の知恵から学ぶことは可能です。記事では、観客を満足させるためのポイントについて解説します。
目次
価値のない脚本を知る
観客は、物語を楽しむためにお金や時間を支払います。その対価に見合わない脚本には、価値がありません。映画では90〜120分程度の間、物語に没頭させなければならないのです。
ライバルは、テレビ、ソーシャルメディア、ゲームなど。もちろん他の映画作品も含まれます。今どきは定額見放題プランが主流なので、少しでもつまらなければ、次々と切り捨てられます。
まずはこの厳しい現実を受け入れることが大切です。私達脚本家は、観客から時間とお金を得るために、物語を紡ぎます。これは仕事です。
仕事である以上、及第点を取る必要があります。アカデミー賞を狙える名作の脚本を書くことは難しくても、「視聴に耐えられる作品」を書けるようになる必要はあるのです。
及第点に達しない脚本は、価値のないものとして、切り捨てられてしまいます。残念ながら。
及第点の脚本に必要な要素を知る
過去の名作、良作と呼ばれる映画作品を参考にすると、共通する要素が含まれていることがわかります。
メタファー(暗喩・比喩)
その1つが、人生を象徴するメタファーです。
映画は、人生にとって大切なことを教えてくれます。生きる喜び、自由の素晴らしさ、人を愛することの愛おしさなど。その多くは抽象的なメッセージです。はっきりと伝えるためには、メタファーを利用します。
『ライフ・イズ・ビューティフル』や『プライベート・ライアン』『シンドラーのリスト』などでは、戦争という悲惨な状況の中で必死に生きようとする人々の姿がメタファーです。彼らを通して、観客は生きる喜びを感じ取ります。
『ショーシャンクの空に』『パピヨン』では脱獄を計画する主人公がメタファーであり、彼らの行動を通して自由の素晴らしさを知るのです。
メタファーの存在しない映画を探す方が難しいかもしれません。しかし、輪郭が曖昧ではっきりしない駄作は存在します。
「この映画は何をいいたいのかわからない」と思われないためにも、脚本家がメタファーについてしっかりと認識することが大切です。
カタルシス(浄化)
全体的に抑揚がなかったり、尻切れトンボで消化不良を起こしたりする映画があります。このような映画を見るとモヤモヤした気持ちだけが残り、満足できません。
一方、見終わった後に強いカタルシスを感じる映画があります。視聴後も数時間から数日に渡って、その映画のことばかり考えてしまうような作品です。価値ある脚本とは、もちろん後者を指します。
カタルシスとは、一言で言えば精神の開放です。映画を見ている間、観客はストレスを感じ続けます。「この後どうなるのか」「主人公は幸せになるのか」「問題はすべて解決するのか」など答えの出ていない問題に押さえつけられるのです。
このストレスが、物語終盤で一気に解消されると、強いカタルシスを感じます。そのためには、構成を緻密に計算しつくさなければなりません。さらに、たった一つの出来事ですべての問題を解決できれば最高です。
小手先に頼ったり、統一感のないエピソードを連続させたりした脚本では、カタルシスは生まれません。メリハリを効かせた作品を目指してください。
脚本アイデアの探し方を知る
メタファーとカタルシスは、いうなれば物語の基礎です。その上で物語の方向性を定めます。そのアイデアが脚本の成否を左右します。
目的は、観客を満足させることです。そのためには、脅かしたり、衝撃的な展開にしたり、他では見たことがないような奇抜な設定を用意したりします。あらゆる手を尽くして観客の注意を引き付けてください。
観客のニーズを汲み取る
観客の注意を引くコツは、感情を揺さぶることです。感情の動き=感動のきっかけとなるのは、恐怖だったり、笑いだったり、驚きだったりします。
なぜホラー映画を見るのかといえば、怖がらせてほしいから。コメディ映画に期待することは笑わせてほしいという要望です。脚本家は、観客のニーズ(望み)を汲み取り、応えなければなりません。
例えば、「未知の世界を見せてほしい」というニーズに応えた映画として『アバター』『未知との遭遇』などのSF作品があります。
また「アッと驚かせてほしい」というニーズに対しては、どんでん返しがある『マッチスティック・メン』『シックスセンス』のような映画が合致するでしょう。
他にも、魅力的なコンビが見たい(『ミッドナイト・ランナー』『3時10分、決断のとき』)、斬新な設定の映画が見たい(『パルプ・フィクション』『CUBE』)など、観客のニーズには、限りがありません。
映画を見た観客が、思わず友達に語って聞かせたくなるような内容になれば大成功。そのためにも、観客が心の奥に抱いている願いを叶えてあげるつもりで脚本を書くことをおすすめします。
脚本家も共感する
大事なことは、観客の願いに脚本家も共感することです。かっこいいカーアクションが見たいというニーズを叶える『ワイルド・スピード』は、車に全く興味がない人には書けないでしょう。
恐竜なんかどうでもいいと考える脚本家に、『ジュラシックパーク』は書けません。そして、人間の興味は趣味嗜好だけではないことも覚えておいてください。
時代背景も強く影響します。1979年にスリーマイル島原発事故が起きたため、同年の映画『チャイナ・シンドローム』は世間から大きな注目を浴びたと言います。
今、世間を賑わすニュースに目を向けてください。共感できる出来事はありませんか。脚本のネタになるかどうか、一考をおすすめします。
まとめ
脚本は、観客を満足させるために書くべきです。過去に成功した脚本を見ると、メタファーとカタルシスが含まれていることがわかります。さらに観客を喜ばせるには、彼らのニーズを知ることが重要です。脚本家自身も今を生きる人間の一人として、どのような出来事に共感できるか、日々アンテナを張ることが求められています。
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