脚本のシーンの書き方の基礎や応用テクニック、上達のコツも解説

この記事は 2023年10月24日 に更新されました。

脚本は、シーンの積み重ねによって出来上がります。そのシーンを書くには、様々な知識が必要です。特に初心者は基礎から学ばなければなりません。
記事では、シーンの書き方についての基礎知識から応用テクニック、上達のコツまでを優しく解説します。脚本のシーンを上手に書きたい人は、ぜひ参考としてください。

※本記事の脚本例の部分は、閲覧環境によってデザインが崩れる可能性があることをご了承ください。

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脚本のシーンとは

シーン(Scene)とは、映画やテレビドラマ、演劇などの元になる脚本において、それを構成する要素のことです。

シーンには、特定の場所や時間、天気などを指定する柱書き、登場人物の状態やアクションを示すト書き、登場人物の話す言葉である台詞を書き込みます。

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脚本のシーンの書き方:基礎知識

前述した通り、脚本のシーンは、柱書き、ト書き、台詞の3要素で構成されています。以下ではそれぞれの書き方について簡潔に紹介します。

ちなみに、脚本の書き方に関する詳しい説明は以下の記事も参考にしてください。

柱書き

まずは柱書きを書きます。「柱を立てる」とも言います。柱書きでは、そのシーンの場所と時間を指定してください。

◯渋谷・駅前(深夜)

この時、「渋谷」だけでは範囲が広すぎるために不十分です。また「駅前」だけではどこの駅前なのかわかりません。広範囲から徐々に細部に迫り、「・」でつなげて指定します。

また、時間帯は昼間以外(早朝、深夜など)は書き込むのが通例です。昼の場合は省略します。

さらに、「◯」の部分にはシーンナンバーが入る予定ですが、創作時にはこのままで問題ありません。コンクールに応募する際にもシーン番号は書き込まないことが一般的です。

柱書きの目的は、読者に対し簡潔に舞台を指し示すことにあります。そのため、シンプルかつ親切に書くよう意識しましょう。

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ト書き

ト書きは、登場人物の状態やアクションを表現する要素です。映像として表すことを前提に書くため、心情などは書きません。

◯渋谷・駅前(深夜)
   人もまばらな広場。
   田中、駆け込んでくる。

ト書きは2〜3文字下げて書きます。基本的に現在進行系の映像を表すことが目的なので、過去形では書きません。

主語を書く場所は、文頭でも文末でも構いません。文章のリズムや感覚で決める場合が多いです。例えば、人物のアップでシーンを終えたい場合は、文末のほうがその意図が伝わりやすいかもしれません。

◯渋谷・駅前(深夜)
   人もまばらな広場。
   駆け込んでくる田中。

また、主要人物が初登場する時には、フルネームおよび年齢を書きます。性別は書きません。慣例として、男性は名字、女性は名前で書く場合が多いです。

◯渋谷・駅前(深夜)
   人もまばらな広場。
   駆け込んでくる田中一郎(20)。
   追いかけてくる恋人の明美。

台詞

台詞は、登場人物が喋った言葉を示す要素です。文頭に人物の名前を書き、台詞部分をカギ括弧(「」)で囲みます。

登場人物名は冒頭から書き始めますが、2行目以降は一文字下げます。また、傍線「――」や三点リーダー「……」は、人物の微妙な心理状態を表現するときに使います。その際は2マス使ってください。

◯渋谷・駅前(深夜)
   人もまばらな広場。
   駆け込んでくる田中一郎(20)。
   追いかけてくる恋人の明美。
田中「終電逃したー。まったくお前が
 もう一杯、もう一杯って粘るからだぞ」
明美「……ごめんって」

脚本のシーンの書き方:テクニック

脚本のシーンを書く際、いくつかテクニックを必要とすることがあります。その一部を紹介します。

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回想シーンの書き方

回想シーンは、過去のシーンを描くときに使います。柱書きに(回想)と追記してください。この手法は、現実には起きていない妄想シーンなどでも同様です。その場合は(妄想)や(イメージ)などと書きます。

◯渋谷・駅前(深夜)
   人もまばらな広場。
   駆け込んでくる田中一郎(20)。
   追いかけてくる恋人の明美。
田中「終電逃したー。まったくお前が
 もう一杯、もう一杯って粘るからだぞ」
明美「……ごめんって」

◯バー・店内(回想)
   明美、勢いよくビールを飲む。
   それを止めようとする田中。

モノローグ・ナレーションの書き方

モノローグとは、登場人物の心の声です。登場人物名に続けて「M」と書きます。一方のナレーションは、第三者による天の声です。こちらは「N」とだけ書きます。意味合いは異なるので使い分けてください。

◯ファミレス・店内(深夜)
   田中、ぐったりしてコーヒーをすする。
田中M「やれやれ、明日も仕事なのに」
   明美はハンバーグプレートに
   がっついている。
   うんざりして眺める田中。
N「この時、田中は知らなかった。運命の
 歯車が少しずつ狂い始めていることに」

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テロップの書き方

テロップは文字を映像に乗せるテクニックです。日時を明示する際、シーン冒頭で使うこともありますが、決まりはありません。ナレーションと同様に「T」と書き始めます。

◯ファミレス・店内(深夜)
T「10年後」
   中年の田中がコーヒーを飲んでいる。
   結婚して妻となった明美とその子供が、
   ハンバーグプレートを食べている。
   その様子を微笑んで眺めている田中。

フラッシュの書き方

フラッシュは、シーンの中に一瞬だけ、違うシーンを挿入するテクニックです。「✕ ✕ ✕」という記号で挟み込み、(フラッシュ)と明記します。フラッシュは、一瞬のインパクトを演出する手法として利用しますが、多用すると混乱を招くため気をつけてください。

◯ファミレス・店内(深夜)
T「10年後」
   中年の田中がコーヒーを飲んでいる。
   結婚して妻となった明美と子供が、
   ハンバーグプレートを食べている。
   その様子を微笑んで眺めている田中。
   ✕ ✕ ✕
   (フラッシュ)
   ハンバーグプレートに夢中の
   10年前の明美。  
   ✕ ✕ ✕
田中「ま、いいか」
明美「ん、なにかいった?」

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脚本のシーンの書き方:上手に書くコツ

以上がシーンの基本的な書き方です。ここからはより良いシーンを書くためのコツをお伝えします。

まず、すべてのシーンには緊張感が必要です。なんとなく主人公を喋らせたいから、楽しげな雰囲気を伝えたいから、などという理由だけでは十分ではありません。

緊張感を持たせるには、シーンに駆け引きを組み込むことです。主人公が目的を持って行動する時、それを邪魔する要素がなければいけません。常にそのような対立関係、敵対関係を用意することで緊張感を生みます。

例えば、恋愛モノであれば男女の駆け引き、アクションであれば命の奪い合いなどです。

このような対立の結果は、主人公の勝利、敵側の勝利、和解、交渉決裂などに行き着くでしょう。大切なことは、決着がついたらそのシーンは終わらせなければいけないということです。

ダラダラと引き延ばさず、スパッと次のシーンへ移ってください。それが、シーンのテンポを良くするコツです。

よくできた脚本のシーンは、歯切れがよく小気味いいものです。反対にダラダラと間延びしたシーンはよくありません。自分のお気に入り映画や名作と呼ばれる映画を見直して、シーンごとに研究すると、良い勉強になるでしょう。

まとめ

シーンは脚本を構成する基本要素です。そのシーン自体は、柱書き、ト書き、台詞で構成されています。それぞれ基本的な書き方が決まっているので、まずはそのルールを覚えましょう。
また、シーンは登場人物同士の駆け引きの場でもあります。お互いの主張を戦わせて決着がついたら、即座に次のシーンに移ることが、歯切れのよいリズミカルなシーンを書くコツです。

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