柱書きは、脚本(シナリオ)の中でも初めに書く部分です。省略して柱(はしら)と呼ぶこともあります。
脚本を初めて書く方の中には、柱書きの書き方がわからない方もいるかもしれません。柱書きの書き方が不適切だと読者(製作者)は混乱します。
脚本家として駆け出しのころ、柱書きの書き方ひとつで読みやすさが大きく変わることに驚きました。この記事では、柱書きの基本的な書き方から、同じ場所をどう書き分けるか、過去のシーンをどう示すかといった実践的なポイントまで、実例を交えてやさしく解説します。読み終えたころには、自分の脚本の柱書きを見直すポイントがわかるはずです。
また、柱書きの基本的な意味からあらためて学びたい方は、脚本の柱書きとは?その役割を解説もあわせて参考にしてください。
目次
柱書きの基本的な書き方

柱書きは「はしらがき」と読み、シーンの場所や時間を指定する役割があります。上記画像を左から順に柱書きとして書くと以下のようになります。
- ○中学校・教室
- ○原宿駅・外観
- ○駅・線路内
- ○ビニールハウス・内
もし時間や天気を指定する場合は、末尾にカッコで付け足します。
- ○中学校・教室(早朝)
- ○原宿駅・外観(雨)
柱書きでは、昼間や晴れがデフォルトです。それ以外の状態を指示する場合にカッコ書きしてください。
柱書きの書き方ポイント
脚本(シナリオ)の柱書きを書く際には抑えておくべきポイントがあります。
脚本の柱書きの書き方1_
同じシーンの書き方

上記は、左右同一の場所の画像です。ただし、昼と夜の違いがあります。
- ○洋館・外観
- ○洋館・外観(夜)
上記のような柱書きの書き方が適切です。
一方、より情緒的に表現したいと考える場合「○朝日に輝く洋館」のように修飾語を用いる人がいるかもしれません。しかし、このような柱書きの書き方は不適切です。
なぜなら脚本の中で、同じシーンが複数回現れるケースが頻繁にあるからです。その都度、 「○朝日に輝く洋館」 や「○夜の洋館」のように書くと、2つの柱書きが同一だとわからず読者の混乱を招きます。
そのため、柱書きの名称はできるだけシンプルにして、一度決めたらずっと同じ書き方をしてください。時間帯や天気の変化は付属情報として末尾に付け足して対応するべきです。
また、より詳細な状況説明が必要な場合はト書きに書いても問題ありません。ト書きの基本から学びたい方は【初心者向け】ト書きとは? 脚本の書き方と上達する勉強法をわかりやすく解説も参考にしてください。
脚本の柱書きの書き方2_
過去からスタートさせない

脚本では、柱書きの切り替わるタイミングで時間経過を表現できます。
- 〇公園・グラウンド
- <内容>
- 〇公園・グラウンド(1年前)
しかし、冒頭の書き出しでは注意が必要です。脚本は、基本的に現在から書き始めます。そのため、過去からはスタート出来ないのです。もし過去から始まる物語の場合、次のシーンで未来を表現します。
- 〇公園・グラウンド
- <内容>
- 〇公園・グラウンド(1年後)
上記の書き方であれば問題ありませんが、下記は不適切です。
- 〇公園・グラウンド(1年前)
- <内容>
- 〇公園・グラウンド
なぜ不適切かというと、最初の柱書きで(1年前)と指示があってもどの時点から1年前の場面を指しているのかわかりません。
つまり、柱書きで過去を指定する場合は、事前に元となる年代を明らかにすることがルールです。
一方、年代を明記したり、テロップで「1年後」と入れたりしてもOKです。
- 〇公園・グラウンド(2020年)
- <内容>
- 〇公園・グラウンド(2021年)
- T「1年後」
柱書きは、誰が読んでも理解できるよう論理的に書いてください。
脚本の柱書きの書き方3_
短くシンプルに

正確さは柱書きに不可欠な要素です。しかし、だからと言って事細かに書けばいいものでもありません。
- ○洋館・東側・庭・花壇・チューリップの前(朝)
これでは逆に冗長で読みにくいだけの文章です。もちろん、必然性があれば長くなってもかません。しかし柱書きは、出来るだけシンプルにまとめる方が読みやすくなります。
一方、削りすぎて内容が伝わらないと本末転倒です。出来るだけ短く、かつ過不足なく伝わる柱書きが理想です。
脚本の柱書きの書き方4_
書き方ルールを守る

上記で解説した以外にも、柱書きの書き方にはルールが存在します。
- ○を先頭に書く。柱書きだと宣言する意味がある。
- 場所は広域から徐々に範囲を狭めるイメージで記述します。
- 場所について、連続する場合は「同」で省略可能。ただし連続しない場合は都度記述します。
- 時間帯について、何も書かない場合は昼間です。それ以外(夜、朝、早朝、深夜など)はカッコで指示します。必然性がない場合「12:00」のように具体的な時間指定はしません。
- 天気について、何も書かない場合は晴れです。それ以外(雨、雪など)はカッコで指定します。
- 夢や空想、過去を指示する場合は、柱書きの文末に書きます。特殊な指示の場合、終わりの箇所も明記します。
これらのルールは絶対ではありません。しかし、読者の理解度を増すためにも参考にしてください。
NG例は、柱書きの先頭に「○」を付け忘れたり、シーンによって付けたり付けなかったりすることです。読者は柱書きと地の文の区別がつきにくくなり、読みにくさにつながります。良い例は、すべての柱書きの先頭に必ず「○」を付け、場所も「広い範囲→狭い範囲」の順で統一して書くことです。
形式が統一されているだけで、脚本全体の印象は驚くほど読みやすくなります。
柱書きの書き方に関するよくある質問
Q. 柱書きとト書きはどう違いますか?
柱書きは「○中学校・教室」のように、シーンの場所や時間を示す部分です。一方、ト書きはそのシーンの中で人物がどう動き、何が起きているかを説明する部分です。柱書きが「舞台」を示し、ト書きが「その舞台での出来事」を示すと考えるとわかりやすいでしょう。
Q. 「○」の代わりに別の記号を使ってもいいですか?
脚本によっては「◯」や「●」などの記号が使われることもありますが、基本は「○」で統一するのが一般的です。大切なのは、脚本全体で記号を統一し、柱書きであることが一目でわかるようにすることです。
Q. シーン数が多くなりすぎるのは問題ですか?
シーン数が多いこと自体は問題ではありませんが、同じ場所への切り替えが何度も続く場合は、本当にシーンを分ける必要があるか見直してみましょう。柱書きが切り替わるたびに読者の意識もリセットされるため、必要以上に細かく分けると物語のテンポが損なわれることがあります。
まとめ
脚本の柱書きは独特な文章です。そのため書きなれない方は戸惑うかもしれません。しかし、知ってしまえばそれほど難しくは感じないでしょう。
柱書きは脚本にとっての屋台骨です。どっしりと安定感のある物語を書くためにも、ぜひ柱書きの書き方をマスターしてください。
脚本家として多くの脚本を読み書きしてきた経験から言えるのは、柱書きが整っている脚本は、それだけで「読みやすい」という印象を与えるということです。逆に柱書きが乱れていると、内容がよくても読みにくく感じられてしまいます。まずは「○」の付け忘れがないか、同じ場所の書き方が揺れていないか、自分の脚本を見直してみてください。


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