脚本を本格的に書き出す前にキャラクターの人物設定を作ります。中でも主人公の設定は特に注力して作り込むものですが、苦労して作成した主人公の設定であっても、作品へ適切にフィードバックされているとは限りません。
脚本家として人物設定を作るときは、設定そのものを書くことよりも、それをどう物語に落とし込むかを重視しています。この記事では、主人公の設定をセリフやエピソードに変換する方法、設定を柔軟にアップデートするコツ、主人公と脇役の描き分け方まで、主人公の設定を120%活かすための知識やテクニックを紹介します。
目次
主人公の設定を活用するコツ1_
設定はキャラクターの元

登場人物の設定を作るには手間ひまがかかります。そのため、一度作成した人物設定は、いち早く読者へ伝えようとしがちです。
しかし、人物設定それ自体には、視聴者を引きつける魅力がありません。視聴者が興味を示すのは、設定を元に生まれたキャラクターです。
設定だけを伝えるのではなく、キャラクターの魅力として伝えてください。
例えば、TVアニメ『無職転生』の主人公ルーデウスは、現代の日本で暮らす男が転生した存在です。前世ではクズ男でしたが、転生をきっかけに真面目に生きようと決意します。
前世における主人公の設定は、無職、引きこもり、男性、30歳代、学生時代はいじめられっ子、肥満体型、ゲームやラノベが好き、童貞など。しかし、視聴者がそれらを知るのは、ストーリーがある程度進行した後です。
物語の冒頭では、最低限の設定しか伝えていません。なぜなら、キャラクターの行動やリアクションを優先して伝えているからです。
視聴者の興味は、今の主人公が、何を思い何をしたかに集約されます。人物設定は主人公の人格を形成する重要な要素ですが、視聴者からの感心は低いのです。
例えば、主人公の設定が「人前で話すのが苦手」だとします。NG例は、ナレーションや他のキャラクターのセリフで「彼は人前で話すのが苦手だ」と説明してしまうことです。良い例は、会議で発言を求められた主人公が言葉を詰まらせ、視線をそらす、といった行動で見せることです。設定を説明するのではなく行動として描くことで、視聴者は自然にキャラクターを理解できます。
主人公の設定を活用するコツ2_
エピソードとして伝える

主人公の設定を作中で主張できないのなら、手間ひまをかけて考える必要はない、と考える人もいるでしょう。しかし、主人公の人物設定は、キャラクター像を掴むための必須項目であり省略できません。
また、人物設定は表立って主張するものではなく、密かに醸し出すものだと考えてください。直接的な表現がなくとも、セリフや思考回路などを介して機能するはずです。
『無職転生』の主人公は前世で引きこもりでした。そのため家から出られないというトラウマ設定を抱えています。ルーデウスとなった今も同じく家から出られません。しかし、家庭教師であるロキシーとの交流を通して克服するのです。
このように、主人公の人物設定はエピソードとして伝えることで活きてきます。
主人公の設定を活用するコツ3_
常にアップデートする

主人公の設定を作る時は、あらゆる項目をガチガチに固定してしまうと不自由です。そうならないように、主人公の設定は余裕を持って作ります。空欄があってもいいのです。
また、脚本を書き進めるうちに主人公の設定を変えることもあるでしょう。その際は柔軟に変更してください。設定を足したり引いたり、常にアップデートすることが重要です。
最も重視することはストーリーを盛り上げることです。そのためであれば、主人公の設定をいくら変更しても問題ありません。
主人公の設定を活用するコツ4_
変化する主人公、変わらない脇役

主人公の設定は、始まりと終りで大きく変化(成長)させるべきだと言われています。これは、主人公に感情移入する視聴者が、満足するからです。
一方、脇役の設定は変化しません。主人公を助ける設定や、主人公の敵として立ちはだかる設定などを最後まで全うします。脇役は主人公を引き立てるために存在だからです。
中には主人公と一緒に変化する脇役もいるかも知れません。しかし、成長の度合いは小さくし、主人公を大きく見せるべきです。
主人公の設定に関するよくある質問
Q. 主人公の設定はどこまで細かく作るべきですか?
物語に直接関わる部分は細かく作り込み、それ以外は空欄や大まかな方向性だけにしておくのがおすすめです。すべてを完璧に決めてしまうと、後から変更しづらくなり、執筆中の柔軟性が失われてしまいます。
Q. 設定を変更すると物語に矛盾が生まれませんか?
変更した設定が、それまでに描いたセリフや行動と矛盾していないかを確認すれば問題ありません。設定はストーリーを盛り上げるための道具なので、矛盾が出た箇所だけ調整すれば、むしろ物語がより自然になることもあります。
Q. 脇役の設定はどのように考えればいいですか?
脇役は「主人公を助ける」「主人公の前に立ちはだかる」など、物語上の役割を軸に設定を固定するとぶれにくくなります。脇役が大きく変化してしまうと主人公の成長が目立たなくなるため、変化の度合いは控えめにしましょう。
まとめ
主人公の設定は作るだけでは機能しません。ストーリーに活かすにはコツが必要です。
まず人物設定とは主人公のキャラクターを構成するための土台だと理解してください。作り込んだ設定は主人公のセリフやエピソードとしてさり気なく表現します。
執筆中は事前に作成した主人公設定にこだわらず、臨機応変にアップデートさせると良いでしょう。また、脇役は主人公を引き立てる存在に徹して設定を固定するべきです。
脚本家として人物設定を作るときは、紙の上で完成させることよりも、書き進めながら主人公が「どう動くか」「何を選ぶか」を試していくことを大切にしています。設定はあくまで土台であり、物語の中で活かされてはじめて意味を持つことを忘れずに執筆を進めてください。
脚本の書き方をさらに学べる本
主人公の設定づくりやキャラクター造形をさらに深く学びたい方には、以下の書籍もおすすめです。

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