起承転結テンプレートでシナリオを書くコツ

この記事は 2023年10月24日 に更新されました。

起承転結をテンプレートとして利用するとシナリオ執筆に役立ちます。

「コンクールを通過したい」「アマチュア作家の壁を超えたい」「作品を書き上げたい」という初心者には特におすすめの執筆方法です。

起承転結を利用したシナリオの書き方やコツをやさしく解説します。

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起承転結の基礎

起承転結は、物語を構成するテンプレートです。

  • 起:物語のはじまり
  • 承:物語の続き
  • 転:物語がひっくり返り
  • 結:物語が終わる

起承転結をパートに分けると上記となります。作文や手紙を書く場合はこれだけ理解していれば十分でしょう。

起承転結の基礎についてさらに詳しく知りたい方は下記を参照してください。

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起承転結をシナリオ創作に応用するコツ

起承転結をシナリオ創作に応用するにはコツが必要です。しかし、一度覚えてしまえばシナリオ執筆が楽になります。

コツ1_考える順序を変化させる

起承転結といえば「起→承→転→」の順番で考えるのが一般的です。しかし、シナリオの場合は「→起→承→転」の順序で考えます。 最初に「結」を考える点がコツです。

たったこれだけで、驚くほどスムーズに起承転結を理解できるでしょう。詳細は後述します。

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コツ2_関係性を意識する

起承転結の各パートは、役割もボリュームも異なります。

しかし、完全に独立したパートは存在しません。それぞれが相互関係にあります。

例えば、「結と起」「結と承」「結と転」「承と転」のような組み合わせです。

起承転結でストーリー構成を組む際は、それぞれの関係性を意識することが肝心です。

起承転結の書き方1_
「結」は肝心要のゴール

物語は「結」に向かって収束します。そのため、起承転結のなかでも肝心要の最重要パートだと言えるのです。

最初にゴールを設定する

マラソンはゴールがなければ走れませんし、登山は頂上に向かって登ります。同様に、シナリオは「結」に向かって書き出すべきです。

そのため、起承転結の「結」を最初に決めます。

「結」ではテーマを明らかにします。テーマとはシナリオを通して一番言いたいこと、と解釈して問題ありません。

『ロミオとジュリエット』では永遠の愛、『マトリックス』では自我の目覚め、『羅生門』では人間の良心などでしょう。

最初にテーマを決めるとストーリーの脱線を防げます。つまり、シナリオの主軸がぶれません。

ちなみに、まず結末から考える思考法は、あらすじを書くときにも利用できます。

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「もしも」がテーマのきっかけ

テーマ(=「結」) は、実は最も書きやすいパートです。なぜなら、制限がないから。 日常の中で生じる「もしも、○○なら」という妄想(願い)のようなものをきっかけにして書きます。

世界の紛争ニュースに胸を痛めたり、夕焼けを見て綺麗だと思ったり、道で転んで赤面したりすることが、テーマの種となるのです。

自分が実際に体験し、強く感じた事であるほどリアリティが増します。唯一無二の完全オリジナルテーマです。

「結」を構成する要素

起承転結の「結」では、テーマを成立させるために必要な要素を考えます。

桃太郎のテーマ(=「結」)を「平和な世界の奪還」とする場合、必要な要素は以下が考えられます。

  • 桃太郎の人間的な成長
  • 金銀財宝の奪還
  • 犬猿雉との友情
  • 鬼退治の成功

大事なポイントは、作者によって価値観が異なるということです。

作者によっては、金銀財宝の奪還を不要だと考えるかもしれませんし、他にもっと重要な要素があるかもしれません。「世界平和が正しい」とみんなが言っても、それが正解とは限らないのです。答えは作者の中にだけ存在します。

ちなみに「結」の要素は、物語が始まった当初 「起」には存在しなかったものです。逆説的に言えば、 「起」 で欲していた要素だともいえます。

このことから「結」と「起」の相関関係が見えてくるはずです。

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起承転結の書き方2_
「起」はシナリオの顔

起承転結の「起」は、シナリオの第一印象を決める重要なパートです。

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共感を得る

スタートでつまづくと先が思いやられます。最悪、それ以上読んでもらえないかもしれません。

逆に、冒頭の数分で読者や観客の心をつかめれば「起」は成功です。つまり「起」では共感を得られるよう工夫します。

例えば政治のマニュフェスト。机上の空論や実態を伴わない理想論ばかり述べても有権者はそっぽを向きます。一方、現実の問題を一つずつ捉え足元から改革を訴える政治家の話には耳を貸すものです。

読者や観客の共感を得るには、彼らの現実を捉えなければなりません。

現実は理想の正反対

先述したとおり起承転結の各パートは相関関係にあります。中でも「起」と「結」は密接な関係にあるパートです。

「結」では物語全体の到達点を決めました。それは作者にとっての理想です。一方、「起」はその正反対に位置します。なぜなら、その配置がもっとも大きな変化をもたらすからです。

リチャード・ギア、ジュリア・ロバーツの『プリティー・ウーマン』では、大富豪に見初められた娼婦がトップレディへと変貌を遂げます。女性が大きな変化を遂げることがドラマティックなのであって、初めからセレブの娘が恋愛をしても物語は成立しません。

つまり、シナリオにおける起承転結では、「結」が決まった時点で「起」の要素も自動的に決まるのです。

映画『プリティ・ウーマン』
リチャード・ギア、ジュリア・ロバーツ

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モチーフは身近なところから

起承転結の最初(起)と最後(結)は正反対の存在です。これはストーリーの細部にも当てはまります。

桃太郎の各要素を例に見ても、「起」と「結」が対になっていることがわかります。

起(始まり)結(終わり)
悪の繁栄悪の消滅
貧乏な老夫婦の家庭裕福な経済
一人で旅立つ絆で結ばれた仲間
桃から赤ん坊強い人間力

ただし、それぞれのモチーフは作者によって異なります。

トップレディの対になる存在として娼婦を持ち出したのは、脚本家J・F・ロートンのオリジナリティーです。『プリティー・ウーマン』では、職業によるギャップを生み出していますが、ジェンダーや年齢、人種などでも代替えできるかもしれません。

モチーフ選びのコツは身近なところからアイデアを見つけることです。軽はずみに突飛なアイデアを採用するとリアリティが伴いません。

まずは自分事としてとらえられるかどうかが大切です。少しでも興味を持てたら取材をして見識を深めましょう。

起承転結の書き方3_
「承」は試練の連続

起承転結の「承」は最も長いパートです。読者や観客を飽きさせない書き方を身に付けなければいけません

単なる中継ぎではない

「承」を書く時、「転」までの中継ぎだと高をくくると面白くできません。「承」では主人公の描写に注力してください。

なぜなら、主人公はシナリオの顔だからです。物語の中心は人間である以上、読者や観客は常に主人公を追いかけます。

主人公を魅力的に書くことが「承」を面白くするコツです。

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主人公を輝かせる試練

主人公は困難へ立ち向かうたびに変化します。刀が研磨されるほど研ぎ澄まされるのと同じように、主人公は試練によって輝くのです。そのため、起承転結の「承」では矢継ぎ早に試練を与えてください。

与える試練は徐々にエスカレートさせます。これは物語にリズムを与えるためです。その際のコツとして、その時の主人公が乗り越えられるかどうかというギリギリの線を攻めます。

作者がでさえ解決方法に悩むかもしれませんが、試練は難解であるほど読者に先読みさせません。つまり、興味を持続できるのです。

試練は得るものから逆算する

主人公が試練を乗り越えたら得るものが必要です。たとえ、表面的には何も得ていないようにみえても(むしろ失っていても)、経験そのものを得ていると考えてください。

得るものとは、起承転結の「結」で決めた要素です。

  • 桃太郎の人間的な成長
  • 金銀財宝の奪還
  • 犬猿雉との友情
  • 鬼退治の成功

上記から、桃太郎と犬は最終的には固い友情で結ばれることは決まっています。そこに至る試練を「承」で描くのです。

まず、考えの入り口として、正反対の状態を作りましょう。ここでは「友情」の反対を「対立」とします。つまり、桃太郎と犬を敵同士に設定するのです。

例えば、犬が人間から虐待されていたとします。当然、同じ人間である桃太郎も嫌悪します。しかし犬の戦闘力は高く、桃太郎はぜひ仲間に加えたい。ではどうするか? これが桃太郎に課せられた試練であり「承」に書く部分です。

解決案の例として、正面から戦いお互いの健闘を称え合うパターンや、犬の弱点を突き従わせるパターンがあります。鬼を共通の敵として再確認し、共闘すべく仲間に引き込むパターンも考えられるでしょう。

ポイントは、起承転結の「承」と「結」が相関関係にあると意識することです。

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起承転結の書き方4_
「転」で最大級に盛り上げる

起承転結の「転」は最も盛り上がります。

しかし、自然と盛り上がるというよりは、ロジックに基づいて仕組みを構築する作業が必要です。

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「承」を積み重ねた結果

起承転結において、複数の「承」を経た結果が「転」です。すなわち「転」と「承」には相関関係があります。

ロシア民話に『大きなかぶ』という童話があります。おじいさん一人では抜けないかぶを、おばあさんや他の人々、森の動物などを総動員して、やっとこさ抜くお話です。

全員揃ってカブを抜く瞬間が「転」であるならば、ひとりずつ手助けが入るエピソードが「承」です。徐々に期待が高まり、最後に大きな達成感を得ます。

「転」に行き着くには、多くの「承」を積み重ねなければなりません。

童謡ではストレートに表されていますが、映画やドラマでは紆余曲折するほどドラマティックです。また説得力も増します。

最大の試練

主人公に課せられる試練という意味で「承」と「転」は似ています。なかで最も過酷な試練が「転」です。桃太郎では鬼に立ち向かうエピソードが該当します。

小さな試練を積み重ねたからこそ最大の試練をクリアできた、という構図になるよう意識しましょう。

まとめ

起承転結は基本的なストーリーテンプレートです。だれでも知っている一方、シナリオへの転用にはコツがあります。「結」から考えることと、起承転結の各パーツの関連性を見極めることがそうです。

起承転結を理解すると、論理的な思考が身につきます。すると、パズルを解くようにシナリオが書けるようになるのです。

また、シナリオの書き方テンプレートとしては、今回紹介した起承転結の他にも三幕構成などが存在します。興味がある方はこちらもチェックしてください。

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  1. 通りすがりの志望者

    色々なシナリオ作りの本を読んでいても、中々実践しようとすると転が分からなさ過ぎてこちらの記事に辿り着いたのですが…非常にわかりやすかったです!!ありがとうございます!

    • かかねば

      通りすがりの志望者 様

      コメントありがとうございます。
      記事がお役に立てたようで何よりです。
      また、そのようにおっしゃっていただけるとブログ運営の励みとなります。
      こちらこそ、どうもありがとうございました。