三幕構成で最も範囲が広いパートが第二幕です。自由度が高い反面、何を書くべきか悩む人も多いでしょう。しかし正しい手順で考えれば悩みを拭い去ることができます。
脚本家として第二幕に向き合う際は、葛藤を描く役割を理解し、ラストの見通しを立て、第三幕へのフラグを意識しながらテーマに沿った葛藤にオリジナリティを加えるという順序で考えています。この記事では、三幕構成における第二幕の役割や考える順序、実践的な思考のコツについて解説します。
目次
脚本の三幕構成:第二幕1_
役割を理解する
第二幕では、登場人物の葛藤を描きます。葛藤とは、登場人物が目標達成に向けて奮闘したり悩んだりする様子のことで、読者の共感を得るために必要です。
例えばスーパーマンは非現実的な存在なので、そのままでは共感が得られません。しかし葛藤を描くと様変わりします。正体を明かせず苦悩したり、コスチュームのデザインで悩んだりする姿を見せることで、人間味のあるヒーローとして読者の共感を得られるのです。
第二幕の間、登場人物はずっと葛藤していなければなりません。『桃太郎』は村を出発してから鬼と戦うまで、どうやって倒そうかと葛藤するのですが、鬼を倒す力(犬、さる、キジ)を得る努力として描かれています。
葛藤の難易度が低すぎると観客は満足しません。恋愛モノの場合、告白して即OKをもらうようでは不十分です。甲子園に連れて行くことが条件だったり、全身整形して別人になる必要があったり、彼女の旦那を殺害しなければならなかったりという高いハードルが必要です。
- 読者の共感を得るために葛藤を描く
脚本の三幕構成:第二幕2_
ラストを見通す
葛藤が作れなければ、第二幕のラストまで見通しを立てましょう。ざっくりで結構です。
登場人物にとっての葛藤はストレスですが、ストレスがかかるほどストーリーは盛り上がります。そのため作者は、心を鬼にして、どんどんプレッシャーをかけてください。『レオン』では主人公の元に転がり込んだ少女が、突然ピストルを町中に乱射したり、年の離れた愛人だと吹聴したり、単身で敵の懐に飛び込んだりします。殺し屋はそのたびに頭を抱えますが、読者は満足するのです。
しかし葛藤をいくつも作るのは意外に大変な作業です。特に第二幕は、三幕構成で最長のパート。三幕構成の配分は「1:2:1」だといわれており、120分の映画なら60分です。これほど長い時間を葛藤で埋めるのは一筋縄ではいきません。
そのため第二幕の葛藤を考える前には、まず見通しを立てた方が効率的です。マラソンにゴールが設定されているのと同じように、第二幕のゴールを先に設定します。
つまり葛藤の積み重ねで到達する結果を先に決めるのです。あくまでも第二幕ラストであり、ストーリー全体の結末ではないので注意が必要です。具体的な考え方は後述するので、まずはその必要性を理解しましょう。
- 葛藤の末の結果を先に決める
脚本の三幕構成:第二幕3_
フラグを立てる
第二幕のラストは、第三幕のフラグを立てるつもりで考えます。ここでのフラグとは、いわゆる「死亡フラグ」や「恋愛フラグ」などと同じ意味で使っています。つまり「第三幕に進む準備は整った」という状態にするのです。
葛藤をすっ飛ばして結果を先に決めることは、小学生が将来進学する大学を言い当てるくらい難しいことです。普通に考えると見当もつきませんが、逆から考えるとどうでしょうか。
例えばタイムマシンで社会人となった自分に会いに行けば、通っていた大学は容易に判明します。タイムマシンは現実に存在しないので未来にはいけませんが、三幕構成ではタイムトリップができます。つまり未来である第三幕から第二幕のラストを考えるのです。
良いフラグは、第三幕を盛り上げます。上手く盛り上げるコツは振り幅を大きくすることです。結末が幸福なら不幸のどん底でフラグが立つし、激しい戦いが待ち構えているなら嵐の前の静けさがそうです。
『レオン』の第二幕ラストでは、殺し屋と少女が愛を確かめ合うようにベッドで眠ります。このシーンは、第三幕で死に別れる二人をより効果的に演出する良いフラグと言えるでしょう。『羅生門』の第二幕ラストでは自己嫌悪に陥っているマキ売の男が、第三幕で小さな希望を見出します。希望を見つけるのは絶望している人物であるべきです。
- 第三幕を盛り上げるフラグを立てる
脚本の三幕構成:第二幕4_
テーマに沿った葛藤を考える
第二幕のラストへ向けた葛藤を考える際、物語のテーマも無視できません。なぜなら、テーマに即した葛藤は読者の興味を引きつけるからです。
『羅生門』では、殺人事件の関係者がつぎつぎ取り調べを受けるのですが、全員が自分勝手なウソをつきます。その一部始終を見ていたマキ売りの男は、人間の悪い面ばかりを目にしたことで人間不信におちいります。
『羅生門』のテーマはなんでしょうか。簡単にいうと「人間は善か?悪か?」について描いているように思えます。マキ売の男は、人間は善だと信じたいのに次から次へと悪意ある証言ばかりが積み重なるので葛藤するのです。これは作品のテーマに即した葛藤だといえるでしょう。
しかし、テーマと異なる葛藤を挿入すると読者は混乱します。例えば、マキ売りの男に余命が残りわずかという設定をつけ足すと、一つの作品に「人間の善悪」と「死生観」という二つのテーマが混在してしまい、何についての話なのかわかりづらくなるからです。場違いな葛藤は、脚本全体の質を落とす原因になるので注意してください。
- 葛藤はテーマとマッチさせる
脚本の三幕構成:第二幕5_
葛藤にオリジナリティを加える
ありきたりな葛藤は、読者が飽きる原因です。例えば「酒に酔って通行人と肩がぶつかりケンカになる」などはステレオタイプの典型でしょう。読者を満足させる葛藤にはオリジナリティが必要です。
オリジナリティは、一般常識に囚われてしまうと発揮できません。「普通はこうなる」という固定観念が思考にリミッターをかけてしまうからです。
例えば、主人公が「友人とケンカして気まずくなる」という葛藤だけで第二幕を埋めるのはNG例です。良い例は、その気まずさが主人公の本当の課題(例えば「誰にも本音を言えない性格を変えたい」というテーマ)と直結し、解決しないまま第三幕へ持ち込まれることです。テーマと結びついた葛藤は、ありきたりな設定でも独自性を持ちます。
まずは難しく考えず、思いつくまま自由に葛藤を書き出しましょう。葛藤の数は多くなっても構いません。次に第二幕のラストにつながる葛藤のみを厳選します。この時のポイントは、解決できないほど大きな葛藤をさせることです。
葛藤が解決できないということは、エピソードにオチを設定しないことであり、不安に感じる人もいるでしょう。しかし実際、葛藤の多くは回収されません。『羅生門』でも殺人事件の当事者たちは自分勝手なウソをついてばかりですが、とがめられたり、罰を受けたりする描写はないのです。
むしろ解決策が思いつかないほどスケールの大きな葛藤のほうが、読者をワクワクさせることができます。
- 解決不能なほど大きな葛藤を作る
脚本の第二幕に関するよくある質問
Q. 第二幕で葛藤が複数ある場合、どう整理すればいいですか?
複数の葛藤がある場合は、テーマに最も近い葛藤を「メインの葛藤」として軸に据え、他の葛藤はそれを補強するサブプロットとして配置すると整理しやすくなります。
Q. 第二幕の途中で飽きさせないための工夫はありますか?
葛藤の強度を一定にせず、緊張と緩和を繰り返すことが効果的です。プレッシャーが続く場面の後に小さな安心や笑いを挟むことで、観客は次の葛藤に備える余裕が生まれます。
Q. 第二幕のラスト(フラグ)が決まらない場合はどうすればいいですか?
第三幕で描きたい結末から逆算してみましょう。結末が幸福であれば、その直前は不幸な状態にする、というように振り幅を意識すると、自然とフラグが見えてきます。
まとめ
第二幕では主人公を葛藤させることを意識しましょう。しかし第二幕は範囲が広いため、まずは全体の見通しを立てます。その上で第三幕が盛り上がるような第二幕のラストを決めてください。次にテーマに即した葛藤を考えるのです。その葛藤にオリジナリティを加えると第二幕は完成します。
脚本家として第二幕を書くときは、「葛藤」「ラスト」「フラグ」「テーマ」「オリジナリティ」の5つを行き来しながら全体のバランスを調整しています。一度で完成させようとせず、ラフに書いてから何度も見直すことで、第二幕は徐々に形になっていくはずです。
脚本の書き方をさらに学べる本
三幕構成の理解をさらに深めたい方には、以下の書籍もおすすめです。


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