主人公のキャラクターを読者や観客に理解してもらうことは極めて重要です。できれば、物語の開始から10分以内に主人公の本質を伝えたいところ。脚本家にとって、とても難しい使命です。しかし、具体的な手順を踏めば初心者でもできます。以下では、脚本の冒頭10分以内における主人公の作り方について解説します。
脚本家として、物語の冒頭10分は観客の心をつかむ最も重要な時間です。この記事では、主人公の目標をセリフではなく行動で示す方法、選択肢を与えて葛藤を生む工夫、家庭・仕事・遊びという3つの要素でキャラクターを深掘りする視点、そして主人公の「真の望み」を裏切ることで物語を推進力に変えるテクニックを解説します。
目次
冒頭での主人公の作り方1_
主人公に明確な目標を与える

脚本において、主人公は物語の中心です。そのキャラクターの本質を理解してもらうことは、脚本家にとって最初の重要な課題です。しかも、これを冒頭の10分以内に達成しなければなりません。なぜなら、主人公に興味を失った読者や観客は、それ以上脚本を読もうとはしないからです。
この課題に取り組む際に大切なことは、情報をセリフとして伝えるのではなく、行動で示すことです。そして、行動を起こすためには明確な目標を持たなければなりません。主人公が物語を通じて何を達成したいのか、それを明確化するのです。目標が決まれば、それに向かってどんな行動を取るのかイメージしやすくなります。
例えば、主人公に「私は大金が欲しいんだ」とセリフで説明させるのはNG例です。観客は説明として受け取るだけで、印象に残りません。良い例は、お金を稼ぐために危険なアルバイトに手を出す、あるいは賭け事に熱中する姿を見せることです。セリフで語らせず行動で示すことで、観客は主人公の目標を自然に理解できます。
例えば、主人公が大金を欲しているとします。しかし、大金を稼ぐには通常の仕事では難しいかもしれません。では、主人公はどうするでしょうか? 非合法な手段に訴えるのか、危険な状況に身を投じる覚悟を決めるのか、他人をだますことを選ぶのか? これらの行動原理を脚本の開始10分以内に示すことで、主人公の本質を明確に示すことになります。
冒頭での主人公の作り方2_
主人公に選択肢を提供する

主人公の本質を冒頭10分以内に明確にするために、主人公の目標や欲求をはっきりさせました。次に、それを達成するための選択肢を主人公に提供してください。
例えば、主人公が大金を手に入れることを目指しているとした場合、目標を達成するために2つの異なる道を提供します。
- 正当な手段を使って、何年もかけて大金を稼ぐ方法。
- 非合法な手段を使って、短期間で大金を手に入れる方法。
この時点で、主人公はどちらの選択肢も可能な状態です。選択肢が与えられた瞬間、主人公は道徳的なジレンマに直面し、葛藤することになります。これらの選択に悩むシーンや葛藤する瞬間を冒頭10分に組み込むことで、主人公の本質を読者や観客に効果的に伝えることができるのです。
冒頭での主人公の作り方3_
人生の要素を通してキャラクターを深掘りする

主人公が目標に向かって進む際、さまざまな選択肢に直面します。この時、普遍的な要素を通して見ることで、キャラクターの人間像を深掘りできます。薄っぺらな人間より、深みの備わった人間のほうが、読者から興味を得られるのは自明の理。その要素とは「家庭」「仕事」「遊び(恋愛など)」の3つです。
これらは、誰もが共感できる人生の要素です。それを通して主人公を見ると、その性格や本質を深く理解する手助けになります。
例えば、主人公が大金を手に入れたいと考える背後に、なぜその欲求があるのかを前出の要素を通して考えてください。それは、貧しい家族を貧困から救うためなのか、仕事での大きなミスで負った借金を解消するためなのか、などが考えられます。こうした視点を加えることで、主人公の人物像や本質、内面を脚本の中で効果的に描写できるのです。
冒頭での主人公の作り方4_
主人公の真の望みを裏切る

ここまでは、主人公が公然と示す目標や願望について考えてきました。ここからは更に一歩踏み込んで、物語の中で主人公自身も気付いていないかもしれない、真の望みについて考えてください。真の望みは、表面的な目標や欲求の背後に隠れていることが多いです。
例えば、主人公が大金を手に入れることを追求しているように見えて、実際には家族からの信頼を取り戻したいという本当の望みがあるかもしれません。また、仕事でのミスを隠すことを目標としているように見えて、実際には同僚の異性への恋心を成就させたいという本心が隠れていることも考えられます。
主人公の真の望みを理解することは、脚本家にとって非常に重要です。なぜなら、これらの真の望みは物語全体を盛り上げ、観客をゴールまで引っ張る重要な要素になるからです。
具体的には、物語の冒頭10分で、主人公の真の望みに対する期待が裏切られるエピソードを描写します。貧困を救おうとしている家族から軽蔑されてしまったり、意中の相手から毛嫌いされてしまったりするエピソードを冒頭に組み込むのです。
このような逆境をどうにかひっくり返そうとして、主人公は奮闘します。その姿をみて読者は共感するのです。つまり、物語を推進し、観客の共感を誘う重要なエネルギー源となります。
主人公の作り方に関するよくある質問
Q. 冒頭10分以内に主人公を描く必要があるのは、なぜですか?
観客や読者は、興味を持てない主人公の物語を最後まで追いたいとは思いません。早い段階で主人公の目標や葛藤を示すことで、その後の展開に注目してもらえます。
Q. 主人公に選択肢を与えることには、どんな効果がありますか?
「正当な手段」と「非合法な手段」のように対照的な選択肢を提示すると、主人公は葛藤します。その葛藤するシーンを描くことで、主人公がどんな人物なのかが効果的に伝わります。
Q. 「真の望み」と「表面的な目標」の違いは何ですか?
表面的な目標は、主人公が自覚して追い求めているもの(例:大金)です。真の望みは、本人も気づいていない深層の願い(例:家族の信頼を取り戻したい)であり、これが物語を最後まで引っ張るエネルギー源になります。
まとめ
脚本の創作において、主人公の設定と定義は非常に重要です。読者が主人公に共感し、物語に興味を持ち続けるためには、できるだけ早く決めなければなりません。
この記事では、開始10分以内に読者の心を掴む主人公の作り方のポイントを4つ紹介しました。脚本を創作する際には、これらのヒントを活用してください。
脚本家として振り返ると、冒頭10分で主人公を魅力的に見せるコツは、説明ではなく行動・選択・葛藤を通して人物像を伝えることに尽きます。あなたの脚本でも、主人公の目標と真の望みをそれぞれ書き出し、その間にズレがあるかどうかを確認してみてください。
脚本の書き方をさらに学べる本
主人公やキャラクターの作り方についてさらに学びたい方には、以下の書籍もおすすめです。


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