魅力的な第一幕を書くための2つの要素【脚本の三幕構成_1/3】

脚本を書きたいけれど、どこから手を付ければいいかわからないと悩んだ経験はありませんか? アイデアを形にする方法を知らないことが原因かもしれません。その対処法として三幕構成の活用をおすすめします。三幕構成はハリウッドの脚本家も使う構成フォーマットであり、身につけると脚本の執筆が楽になるはずです。まずは特に重要だと言われている第一幕から解説します。三幕構成における第一幕の役割、第一幕に必要な2つの要素とはなにか、実際に構成を組むときのコツなどをお伝えします。

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始まりは慎重に

三幕構成とは、ストーリーを3つのパートに分ける構成フォーマットです。なかでも第一幕は特に重要だといわれています。なぜなら、第一幕が未熟な脚本は最後まで読まれないからです。

近年は、AmazonプライムビデオやNetflixなど定期購読のVODが流行しており、スマホで手軽に映画を視聴できます。あまりに手軽すぎて、次から次へと見る人も多いでしょう。ただ、つまらない映画に当たった時はすぐに次の映画に切り替えます。せいぜい10分~20分くらい見て視聴を続けるかどうか決めるはずです。

一方、あなたの脚本を最初に読むのは、コンクールの下読み担当者やプロデューサーです。彼らは一日に数十本の脚本を読みます。その際、最初の数ページを読んでつまらなければその先は読まれないと思ったほうがいいです。書いた当人としてはせめて最後まで読んでほしいと思うのは当然ですが、未熟な脚本を読む作業は苦痛なので仕方がありません。

実際、脚本家として数十年活躍しスクールの講師も務めた人は、第一幕がつまらないのに尻上がりに面白くなる脚本は皆無だと言い切ります。それほど第一幕は重要なのです。むしろ最初の一行目から慎重に書かなければなりません。

  1. 第一幕がつまらない脚本は読まれない

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状況設定に徹する

誰もが「面白い!」と太鼓判を押す第一幕を書くにはどうすればいいか。残念ながらむずかしいと言わざるを得ません。例えば名作と名高い『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』でも「退屈で眠くなる」とバッサリ切る人もいるくらいです。ここは考え方を変えて「面白い」ではなく「正しい」第一幕を書くことに専念してはどうでしょうか。

「面白い」を追求すると、インパクトが強い刺激的なシーンや、万人受けしそうなこびたシーンを組み込んでしまいがちです。凝ったセリフやアクションを冒頭から見せられても、脚本の読者は逆に冷めてしまいます。そうではなく、読者が求める情報を映像として見せることに貴重な枚数を費やすべき、というのが正しい第一幕の考え方です。

では読者が求める情報とはなんでしょうか。それは状況設定です。状況設定と聞くと地味な印象を持ち、生き馬の目を抜く映画業界でやっていけるのかと不安になる方がいるかもしれません。しかし、単なる状況設定であっても、内容を吟味すれば脚本の読者の興味を引きつけることは可能です。

  1. 第一幕には状況設定が必要

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必要な情報を厳選

三幕構成の第一幕では状況設定を決めます。状況設定は、あなたが作り出した世界に初めて足を踏み入れた人に対してのルール説明です。何でもかんでも説明すればいいというわけではありません。読者は必要な情報にだけ興味を抱くからです。

例えば車の教習所に通う人に対して、六法全書をすべて説明しても上の空です。しかし道路交通法について説明すれば聞く耳を持ちます。それは、その情報を必要としているからです。

脚本における状況設定は、登場人物の年齢や職業、家族構成や住んでいる街の情報などです。しかしそれらの情報をすべて説明していては時間がいくらあっても足りません。必要な情報だけに厳選します。つまりストーリーに関連した情報です。『桃太郎』では桃太郎の性格描写や育ててくれた祖父母との関係性、『浦島太郎』では太郎の職業が漁師であるという情報を指します。

ただし、第一幕で明らかにしなくてもよい優先度の低い情報だとしても、作者は理解しておかなければなりません。裏設定として把握しておけば脚本に奥行きが生まれるからです。

  1. ストーリーに関連した状況設定だけを明記する

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中心は主人公

状況設定は、必然的に主人公に関した情報が多くなります。すべての物語の中心は主人公だからです。いつの時代、どこに住み、どんな性格の人物なのか。日常にどんな不満を抱えていて、何を求めているか、明確にできれば深みのある人物像を描けます。

さらに主人公の敵も忘れてはいけません。それは人物に限らず、環境になるケースもあります。『マトリックス』のエージェント・スミス、『バットマン』のジョーカー、『レオン』の悪徳警官スタン、『ゼロ・グラビティ』では過酷な宇宙空間が敵です。

敵が存在しない平和な日常を脚本に書きたいという人もいるでしょう。しかし静かに見える物語にも敵は存在します。むしろ敵が存在しない脚本は皆無です。朝に目覚めて、食事をして、眠るだけの監視映像なら敵は存在しないかもしれませんが、2時間も見ていられません。

  1. 主人公を取り巻く環境や心情、敵の存在が不可欠

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物語を突き動かす

状況設定が完了した後は、ストーリーを前進させなければなりません。ビー玉は弾かなければそこに止まったままだし、車もアクセルを踏まなければ動かないのと同じです。脚本の第一幕ラストには、ストーリーを前進させる原動力になるエピソードを作ります。

『桃太郎』なら鬼退治に向かう決意を祖父母に伝える瞬間、『浦島太郎』なら亀の背中に乗ると決めた瞬間が、次の話に進むきっかけ(=原動力)です。『レオン』なら一家惨殺された少女がレオンの部屋をノックするシーン、『羅生門』ならマキ売りの男が武士の死体を発見したと検非違使に届け出たシーンが該当します。

この出来事によってストーリーは方向転換して新たな局面に突入します。主人公にとっては困難が待ち構えていることが予想されるでしょう。しかし避けることはできません。あなたは、そうなるように主人公を追い込まなければならないのです。

ちなみにこのエピソードは派手なアクションでもいいですが、地味なシーンでも問題はありません。要はストーリーを今とは違う場所へ運ぶきっかけとなれば良いのです。いわゆるストーリーの転換点やプロットポイントと呼ばれます。

  1. 物語(主人公)を動かす出来事が必要

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第一幕は結末ありき

ここまで第一幕には「状況設定」と「物語を突き動かす出来事」という2つの要素が必要だとお伝えしました。しかしうまく考えがまとまらないこともあるでしょう。そんなときには物語の結末を先に決めます。なぜなら第一幕は結末と正反対にあるからです。

良い脚本は変化が明確だと言われています。冒頭で登場した主人公が、映画が終わる2時間後になっても、まるで成長しないままだったらがっかりしませんか? 『レオン』の冷酷な殺し屋は少女と交流して人間らしい心を取り戻し、最後には命がけで守ろうとします。『羅生門』のマキ売りは当初人間なんて信じられないと頭を抱えていたのに、赤ん坊に希望を見いだして育てると決めます。観客はその変化に感動するのです。

そのため脚本の最初と最後は大きく違っている方が良いのです。設定はもちろん、主人公の心情も大きく変化させなければなりません。特に主人公にいたっては別人かと思うほどの激しい変化が求められます。この変化はキャラクターアークと呼ばれ、ハリウッドのプロデューサーたちが脚本を評価するポイントの一つです。

また結末は特に条件がありません。幸せになっても、不幸になっても、生きていても、死んでしまっても、恋人と別れても、再会しても、世界の平和を守っても、世界を征服してもいいのです。ただ、結末は脚本家自身が選ぶべきです。読者や観客が望むラストはなにか? などと考えると脚本から熱が失われてしまい、ひいてはリアリティも失われてしまうからです。

  1. 第一幕は結末と正反対である
  2. 結末は脚本家自身が独断で決定しなければならない

まとめ

三幕構成は、プロ脚本家も御用達の優れた構成フォーマットです。なかでも第一幕を書く際には、特に注意を払う必要があります。「つまらない」と烙印(らくいん)を押されたら、その先は読んでもらえないからです。第一幕には、主人公を中心とした状況設定と、ストーリーを動かす出来事を含めましょう。書くときのコツは、先に結末を決めておくこと。第一幕はその正反対に位置するからです。